マラノーチェのレビュー・感想・評価
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ガス・ヴァン・サントの幻の長編デビュー作
映像は白黒。途中に8ミリカメラを手に入れて撮影するシーンがあるのですが、そのフィルムシーンとエンドクレジットの映像だけがカラーといったもの。ポートランドの詩人ウォルト・カーティスの自伝的小説を映画化した作品だ。 ゲイであるウォルトがメキシコ人青年ジョニーに恋をするストーリーで、ジョニーとは言葉が通じずチグハグな関係を繰り返す。なんとか彼を抱きたいと思いつつも、ジョニーの友人ロベルトにカマ掘られ、「最悪な夜(マラノーチェ)だ」とつぶやくところが面白い。タイトルの意味はここではなく、最後に訪れるのですが、単純なゲイ映画とは思えない奥深いところがある。 「移民局じゃない」と、メキシカンに警戒される中で必ず発する言葉。それだけ不法移民が多いということなんだろうけど、ろくな仕事にありつけるわけもなく、ヌードダンサー、男娼、そしてヤクの売人にしかなれない現実が物悲しい。それでも自由を求めて国境越えをする彼ら。儚い命を危険に晒してまでアメリカという国にやってくるのです。 決してプロットを楽しむ映画ではなく、ウォルトの心象風景を繊細に描いた作品。映像の陰影の濃さのためか、ジョニーとロベルトの区別がつかなかったり、切り返しやモンタージュなどという編集を無視するかのような解りにくさもあったけど、嘆きとも思えるウォルトの気持ちが伝わってくる・・・ 【2007年11月映画館にて】
グランジ前夜なオルタナ臭〜
個人的にG・V・サントは商業映画を撮るのに向いていない監督だと思っていて、初期衝動炸裂な本作を観てしまうと尚更にそう感じてしまう。 記念すべき"ポートランド三部作"の一作目である本作を観れるまでには、相当に長い時間を要し。 映画と言うより全編が写真集のような雰囲気とヴェンダースやジャームッシュ的なLOOKに、決して二番煎じにはならないG・V・サントのセンスが溢れている。 グランジはシアトルが発祥の地ではあるが、本来ポートランドであり先駆的な存在はG・V・サント何じゃねーか?と思わせる、音楽的にもスタイルも本作の全体的な雰囲気が、正にグランジ前夜な感覚。 ジョニー役のメキシコ人?どこで見つけて来たのやら、本作の象徴としての存在感がバッチリ過ぎる。 ポートランド出身のビートニク詩人"ウォルト・カーティス"彼の原作を読んでみたい。
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