「さあみんなでカモメになって黄昏れよう!」めがね 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
さあみんなでカモメになって黄昏れよう!
ウワサの黄昏れる映画『めがね』を見ました。
全編長廻しのカットで、一つ一つのシーンがボッ~としていて、台詞も極端に少なめで(特別出演している、ワンちゃんまで吠えない)映画そのものが黄昏れているのですよ(*_*)それでうっかりすると、その心地よさに引き込まれて、ウトウトしてしまうところが何カ所もありました。決して退屈だからではありません。
作品の主人公のタエコが最初拒絶しつつも、だんだん滞在先の民宿周辺人物の「あなたも黄昏れ~る、黄昏れ~る」と二言目には繰り出される暗示のような言葉に引き込まれていったように、観客の自分もこの不思議な映画に引き込まれていったのでした。
あまり登場人物の背景すら省略してしまってる作品ですが、ただ解っているのはタエコが人気作家で、編集部から追われていて、どこか携帯のつながらないところへ、どこでもいいやという気持ちで、舞台となる民宿にやってきたわけです。
そこは海と浜辺があるくらいで、全く他に何もないところでした。
ネツトが当たり前になってきた現代で、気がつくと情報洪水の中で神経をスリ減らしている人が増えてきます。自分が何を考えどうしたいのか、自分と向き合うためにも、情報洪水の刺激から解放されることが大事でしょう。荻上監督が描きたいのは、「旅」するなかで、静寂を愛することの必要性を説いているのではないかと思います。
めがねに出てくる民宿のようなところで情報遮断して、黄昏れていきますと、自然と関心は自分の心深いところに向けられていきます。
もちろん最初は、タエコのように抵抗があるかもしれません。退屈かもしれません。しかしそこを慣れていくと、豊かな心の世界を見つけることができるでしょう。
人は人生の旅人です。
観光名所やレジャー施設などなくとも、転々と変化していく刺激が得られなくても、変わらず、迷わず旅し続けている本当の自分自身と出会うことが喜びなんでしょう。そしてそれが、悩みを断ち切る方法にもなっているのですね。
あなたさまも、「旅」してみませんか?