「信じることで願いが叶う。人はそれを、奇跡と呼ぶんだ。」遠くの空に消えた 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
信じることで願いが叶う。人はそれを、奇跡と呼ぶんだ。
知ってるかい?
蜂は航空力学的に言えば、
飛べる構造じゃないらしいんだ。
なのに、実際は飛んでるだろ。
何故だと思う?
蜂は飛ぼうと思ったから飛べたんだ。
信じることで願いが叶う。
人はそれを、奇跡と呼ぶんだ。
行定監督ご自身が7年間温め続けた脚本をもとに作成された映画です。
そして、主人公の父親の生物学者に語らせる蜂の生態の話が上の台詞になります。この冒頭の言葉が、監督がこの作品で描きたかったすべてでしょう。
どこか外国のおとぎの国での出来事のようで、現実とファンタジーの中間にある不思議な設定です。
父親が二度と帰ってこないことを知りながら、丘の上でUFOと交信し続ける少女。
空を自由に飛び周り、月に行くことを夢見ている謎の青年。
その青年に淡い恋頃を抱く村の学校の先生。
村には似つかわしくないけばけばしいバーと、
まるでサーカスに出てくるようなウェイトレスと楽団たち。
このような不思議な設定の人物を登場させつつ、物語は、「ぼくらの七日間戦争」のような少年活劇を見せたり、ほんの少し環境問題に触れたり、黒澤明の「夢」を彷彿させるような行進シーンがあったりで、まるで夢うつつの世界と現実のリアルな世界とが揺らぎつつ混じり合いながら進んで行きます。
きっとこれは監督の少年時代の潜在記憶と「対話」しながら物語を構想したのでしょう。いやもしかしたら、睡眠中に夢の中でこの作品のような霊界を探訪してきたのかもしれません。だから登場人物の台詞回しがみんなオーバーアクションで、まるでアングラ劇団のお芝居を観ているような感じになります。
でもそういうつっこみをしない素直な性格の人が見たら、後半のファンタジックなシーンにうっとりすることでしょう。あるいは大人になって忘れていた童心のころの純な思いを思い起こされることでしょう。
そういう向きには、行定監督のわざと彩度を絞った淡い色調の映像は、ぴったりはまると思います。
そしてラスト少年たちがどんな奇跡を起こすのか、一気に物語は盛り上がっていきます。その奇跡はそれなりにすごいものと納得できる最後にはなっていました。
ただ、SFチックなシーンも描いているだけに、もう少し少年たちが何かを信じることで、ファンタジックな奇跡が起こればもっとよかったですが、2時間23分という時間が押しているため難しかったのでしょうね。
少年たちの「牛のうんこ爆弾」のいたずらには閉口するかも(^^ゞ
キャラメルポップコーンを食べながらご鑑賞の方は要注意ですぞぉ~。