「評価を見てから観ると「そこまで悪くはないな」と思える」サンシャイン2057 alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
評価を見てから観ると「そこまで悪くはないな」と思える
皆さんが「のめり込めない」理由の1つとして、乗組員や宇宙船の設定が細かく伝わってこないことが大きいと思います。
自分らはイカロス2号に乗っていますが、先に出発した1号も、同じ任務を負っていながら原因不明の事故により行方不明。当然任務も失敗。
1号の船長が状況報告?を録画していて、それを2号の船長や精神科医が見ている。
ストーリーは2号が既に太陽に向かっているところから始まり、「太陽に核爆弾ぶち込んでビッグバンみたいなの起こして、弱ってる太陽を活性化させてやるぜェ」という説明だけあり、あとは適当にウダウダやってるところに1号の救難信号を受け取り、賛否両論ありつつ結局1号の元へ。
救難信号出てたけど、着いてみれば食料も酸素も充分残ってる、爆弾もある。メインシステムが人為的に破壊された形跡があり、確かに任務は遂行できないが、じゃあ誰が破壊したのか。何故充分生きていける環境でありながら、破壊しなければならなかったのか?
1号の探索で、またもや1号の船長のムービーを発見。「人類は塵に過ぎない」…2号の面々は何を意味するか分からず。
この後、皆さん不服の1号船長がバケモンになって襲ってくるシーンになるわけなんですが、これも何故バケモンになったのかわからずじまい。ていうかあれバケモンだよね?まさか普通に太陽浴び過ぎた人間?まさかぁ。
この辺りが概要ですが、まず乗組員の説明がない。植物の世話してる人、ずっと家庭菜園ルンルンやってる人かと思ったら、Wiki見たら植物学者なんですって!
ま、宇宙船にそんな余計な一般人乗せるわけないか。笑
どう選ばれたのかも、どのくらい有能なのかも、1号の人達との関わりも、なーんも情報ナシなので、全然感情移入できない。共感もできないまま突然のハプニング。
少なくとも日本では、主人公格の人達がどんな人なのか?がわからないのに、後の展開に興味持てないんじゃないでしょうか。あえてどんな人間か伏せて後々重要な事実と共にわかっていくタイプの話ではなく、単に端折られただけの感じですし。
それで突然ハプニングが起きてキャーキャー騒がれても、いまひとつ「助かってほしい!」とか「これからどうなっちゃうんだろう!?」とか、「その人達のこの先が気になる」という気持ちが起きないんですよね。
そして宇宙船の説明もなし。第3と第4が壊れて帰りに必要だけど何とかかんとか。何の話?で、核爆弾どこに積んでるの?マンハッタンと同じ大きさの爆弾が入るような宇宙船にはとても見えないし、爆弾詰んでる重大ミッションの割に太陽光反射するシールド小せー!
そしてそして、太陽に焼かれて中の人死んでるのに、宇宙船内部はめっちゃ綺麗で埃チラチラ舞ってる。どうした?????普通内部の壁とかベンチとかも燃えカスになるでしょ!
スターウォーズで宇宙空間で爆発音が響くのと同じで突っ込んじゃダメなやつ?
でも、地球に資源なくて核爆弾作れるのこれが最後なんだってさ!宇宙船なんか作ってっからだろ!
それに、宇宙空間に素顔のまま出てもパーン!しません。散々酸素がない酸素がないって騒いでるのに、酸素の意義は呼吸できるかどうか以外にはないらしいです。笑
ただ、言わせてもらえばこの作品、SFというカテゴリで売り出したから低評価になったのもあるかなと思います。
個人的に、メインで見せたかったのはSFよりも、宗教的というか、「大いなる自然(神の意志)に人間が抗うことができるか?」というテーマだったのではと感じました。
アルマゲドンみたいに、単に乗組員が命懸けで任務を遂行する感動ものとして観ると、皆さんのおっしゃる通り前半と後半がチグハグ過ぎるし、チープに感じられますが、実際には任務云々ではなく太陽=神の威光に抗い自分達の力で未来を切り開けるのか、という視点で見ると、後半のトンデモ設定も、むしろあれがメインなんだろうと納得がいきます。
上に書いた通り、序盤で1号の船長の動画を2号の船長と精神科医が見ているのですが、精神科医は最初から太陽に「憑りつかれて」いるような描写があります。そして、2号船長も自室らしき場所で動画を見ている時、何度も巻き戻し、「美しい光景」「君たちにも見せたい」というような台詞と1号船長の目をじっと見ています。これも、船長の異常を感じつつも太陽に憑りつかれている描写のように感じます(以下「太陽見たい病」と呼びます)。
そして、船長が死ぬ時、もう助からないとわかっているにしても、太陽の方を見たまま全く船に戻ろうとする意思も見せません。恐怖しているようにも見えず。
そしてそれを見た他の乗組員達が「早く戻れ」と声を掛けているにも関わらず、精神科医だけは「何が見える、船長、何が見えるんだ!」と船長の命より、太陽に執着しています。結局船長は太陽によって焼け死にますが、精神科医は何度も何度も太陽の映像を見ては、皮膚が焼け爛れ、剥がれ落ちているにも関わらず、本物の太陽見たさに1号に残ります。そして彼もまた、1号の乗組員と同じ場所で、同じように太陽に焼かれて死にます。
これを見て分かる通り、太陽は神の象徴であり、船の「イカロス」という名前の通り、太陽に憧れ、近づきすぎて死んだ愚か者が、太陽見たい病にかかってしまった船長と精神科医。
主人公の物理学者は、太陽(物体そのもの)よりもビッグバン(現象)の方に興味があり、それを見るためなら「死ぬのも怖くない」と言っています。むしろ夢で太陽に落ちていく(引き寄せられる?)自分を何度も見ると語っており、他の乗組員と違って太陽怖い病です。
つまり、↑の2人のような太陽見たい病にかかるはずがなく、1号船長が太陽見たい病にしようとした(?多分船長のあの瞳がその役割?)時も、彼には効かず。
ちなみに植物学者は植物に執着し、機械担当のチャラい兄ちゃんも、任務のためなら他はどーでも良いという人(何気に任務中はこいつが一番冷静)で、言ってしまえば任務の執着してる人だったので、1号の船長が「自分が人類の最後の1人になるんだ~!最後の人類として神様に会うんだもんね~!」と直々にぶっ殺しに来ます。若いお姉さんは何か執着してるもんあんの?と思ってましたが、最後の最後で主人公の事好きだったことがわかります。
つまり彼らは「植物!任務!好きな人!」に執着しており、「太陽!?知らねーよ!」なので、太陽見たい病にはかからない=1号船長のブッ殺案件になってしまいました。
キリスト教等の唯一神が当たり前の人々は、「神様以外の大切なもの」といったら必然的に「神様の次に大切」という意味になり、「神様より大切なもの」なんてのはありえないんですよね。少なくとも建前上は。
でも、その神の力が衰えてきた時、それでも神を信じることに執着するのか、それともそれに代わるような何か、心に根を張った神の幻影に打ち勝てるような何かを、他に持つことができるのか?というテーマ…だと思えば、単にSFとして観るより余程深い作品だと感じられる気がします。
もちろん自分は監督ではないので、監督が本当にそんなつもりで撮ったかどうかはわかりませんが(笑)、どのみち単なるSFでは終わらない、かなり壮大なストーリーだったと思います。
日本人でいったら、「人類が大自然に敵うかどうか?」みたいなテーマだと思えば見やすいのでは。
要するに、すげー圧倒的な何かを見せられて「こんな圧倒的存在に敵うわけねーだろ?お?お??」に対して「あ、ハイ」となるのか、「いや、やったるわ」となるのか。
凄い勢いで作品を庇いだてしましたが(笑)、個人的に気に入らなかったのは、サブリミナル使ってるとこ(バグかと思った)。
気持ち悪いからやめてくれぇ。下手したら1号船長の皮ズル剥けシーンより不気味。
何の意味があったのか…1号乗組員の話をしてなかったからとりあえずサブリミナルでちょいちょい入れてみました、くらいの意味しか感じません。何やねん。邪魔です。
調べてみたら、普段ホラーを撮ってるこの監督のお馴染みの手法らしいですね。
あと1号船長の姿も、画面がいちいち振り回したかのようにぐっちゃぐちゃになって、よく見えません。皮ズルベチャでキモい見た目だから配慮したのかもしれませんが、それにしても妙なタイミングで一瞬止まってみたり(バグかと思った)、ぐにゃぐにゃしたり。
あー、やっぱこうやって冷静に考えちゃうと後半の1号船長の下りはいらなかったなとか思っちゃいます…笑
何にせよ、クソ映画というレビューを見てからの期待値低めの鑑賞なら楽しめると思います。
くれぐれも「乗組員が何やかんや友情を深めながら地球を救うお話☆」を期待しないことです。友情なんてありません。人間的には割とクズの集まり(かなり逼迫した非常時なのでこれを普通と言う人もいるだろうけど)。