「会場を出ても泣けた」ツォツィ シンコさんの映画レビュー(感想・評価)
会場を出ても泣けた
ツォツィは赤ん坊に乳を飲ませるため、女性に母乳をもらおうとしますが、そんな時でさえ彼は、女性の家に押し入り、銃で脅して授乳させる方法しか知りません。
ツォツィは父親の暴力的な環境で育ち、病気の母親から遠ざけられて愛情を拒絶されてきた過去を、封じ込めて生きてきたのでした。
忘れていた人間らしい感情が、次第に彼の中に蘇っていきます。
いつしかツォツィは女性の家に入ろうとするとき、「頼む、入れてくれ」と言い、女性が差し出した食事に「ありがとう」と礼をするようになるのです。
そして赤ん坊の父親は、ツォツィに対して怒りや憎しみではなく、「信頼」で応えようとしました。
恐らくツォツィが生まれて初めて受けた、人間としての「品位」でしょう。
ラストは無上の 感動的なシーンでした。
上映後、外に出てもまだ目が潤んでいたような映画は僕は初めてです。
暴力と蔑みのなかで育った子は、暴力と敵対の生き方しかできないし、愛情を与えられた人間は、優しさやいとおしさなどの感情が育まれるでしょう。
この映画は正にそういうことを表現しています。
それは境界性人格障害の人も同じです。
愛情というものが人間にとって如何に大切なことか。
全ての子に適切な愛情が注がれる世の中に なってほしいと願うばかりです。
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