黒い眼のオペラのレビュー・感想・評価
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ギャンブルに手を出したら懲戒処分
ツァイ・ミンリャンの映画力は健在。ラストには幻想的なシーンもゆったりと流れ、どっぷりと映像美に惹かれるのだが・・・
登場人物の顔のアップがほとんどない前半。シャオカン(カンション)なのかどうかもわからない人物。まだそんなに元気じゃなかろうに・・・などと、最初のチンピラかと勘違いしてしまった。あらすじを先に読んでたらわかったろうに、映像だけでは無理じゃないかと感じます。
ロングショットの多用と、長いワンカットはヨーロッパ的で、情感たっぷりなのです。傷ついたシャオカンを手厚く看護する若者。この青年ラワン(アトン)はかなり男前で、行動から察するとゲイっぽい気もしたのですが、どこまで愛情を注いでいたのかは不明。とにかくずっと一つのマットレスの上に蚊帳を降ろし、二人で寝て過ごしていたのだから、直接的ではないにしろ、そのケはあったはず。
嫉妬心だったのか、単にそのベッドを汚されたと感じたからなのか、若い女性の存在が障害となってしまう。エロチックなシーンも満載だし、強制された性と自由な性とが対照的でもありました。ただ、引越しとか、毛布に包んで人を運ぶシーンとか、わけのわからないコントラストもあったりして、頭をひねってしまいます。
台詞も少ないし、説明調の部分もほとんどない。煙霧という気象現象が幻想的ならよかったのに、単なる光化学スモッグのような公害でしかなかったのも痛い。廃墟と化したビルの水溜まりにしても、洪水によるものなのか、水道管が破裂したものなのかもわからないし・・・
【2007年6月映画館にて】
ツァイ・ミンリャンワールド全開
昨年の「東京フイルメックス」でこの作品に関して映画関係者が話していた噂を耳にした。
この作品にはモーツァルトに関係する財団が出資していて、実際に「魔笛」の曲も使われてはいるがあまりにもモーツァルトとはかけ離れた内容の為に数千万円の違約金が発生しそうだったのを監督曰わく、「映画に登場する廃墟はモーツァルトの「レクイエム」に対する私なりの解釈です。」と言って乗り切ったのだとか…これが本当ならば凄いですね(笑)
もうツァイ・ミンリャンワールド全開です。
はっきり言ってかなりコアなファンでも戸惑いを隠せない内容でいつもながらに一切の説明は無く、マットレスを運び暑い夜を快適な場所を求めて徘徊しながら男と女・男と男・寝たきりの男と介護する女達の充たされ無い愛の物語が展開されます。
しかしながら“水に纏わる”ツァイ・ミンリャンの作家性溢れる廃墟の建物の中にある水たまりを使用した場面の美しさや、前作の『西瓜』を超える淫靡なシーンに、相変わらずのホモセクシャルを連想させる数々のシーンが後半畳み掛ける様に展開されるのがツァイ・ミンリャンファンには堪らない内容になっていますね。
そしてラストシーンの美しさは筆舌に尽くし難いものがありました。
原題は「一人では眠りたくない」…納得です。
(2007年3月25日【シアター】イメージフォーラム/シアター2)
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