デジャヴ : 映画評論・批評
2007年3月13日更新
2007年3月17日より日劇1ほか全国東宝系にてロードショー
思いがけない飛躍を見せる斬新で刺激的なサスペンス
ホップ、ステップ、ジャンプと、物語が段階的に思いがけない飛躍を見せ、サスペンスのテイストを変える仕掛けが斬新で刺激的だ。
最初は、捜査官ダグ(デンゼル・ワシントン)の優れた捜査で魅せる。手掛かりが得にくい水上でのフェリーの爆発事件の検証で、どんな微小な証拠も見逃さず、手際よく論理的にテロであった事実を突き止める。さらに、犠牲となった女性クレア(新人のポーラ・パットンが魅力的に好演)が、爆破の被害者を装ってテロ犯に殺されたことをも見抜く。
しかし、ここで突如、スパイ衛星による驚きの監視システムが登場。記録データから再構成される過去(4日と6時間前)の映像を自在に覗き見ながら犯人を突き止めていくという不思議な感覚を味わせてくれるのだ。1度に見ることができるのはひとつの場所だけという条件で、何を見るかはダグの瞬時の判断力に委ねられるアイデアもスリルを煽る。
ここで落ち着いて捜査が繰り広げられてもおもしろいだろうに、物語はさらなる飛躍を見せ、賛否が別れることだろう。これには展開的にも納得できない部分もあるが、意表を突いた仕掛けで、今まで見たこともない驚きのカー・チェイスが楽しめ、不満はない。
ただ、デジャブや記憶と事実のギャップなど、しばしばダグを襲う奇妙な感覚が、トニー・スコット監督ならではのカットが素早いスタイリッシュな映像と畳み掛ける演出に幻惑され、わかりにくいのが惜しい。
(山口直樹)