劇場公開日 2007年3月10日

パラダイス・ナウのレビュー・感想・評価

全12件を表示

4.0ニュースの中の人は同じ人間

2023年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

例えばどこかで内戦が起きたとか
テロが起きたなどとニュースで見聞きし、
その被害者も犯人も人間なのだと知識としてわかってはいても、
はたして彼らにも家族がいて日々普通に仕事で叱られたり
逃げたくなったりというところのある
普通の、ごく普通の、人だということを
常々忘れてしまっている。

こういった作品をみることで
自爆テロに臨む者も等しく息をし悩みを抱える人間で、
別の世界や次元に生きてるわけではないのだと
よくわかっていなくてはならない。

最後の選択は未来につながってほしかったのか。

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こまめぞう

4.0ドゥニ・ヴィルヌーヴの灼熱の魂を思い出さす

2021年8月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

個人評価:3.8
パレスチナの実情を教えてくれる。NEWSには流れない自爆テロを行う人達のココロ。
車工事に勤めてた若者が、ある日突然、自爆テロの実行犯へと変わる。
現実こそが地獄で、そこから抜け出す行為。極楽浄土への教えが根底に流れている。
後半の若者のココロの変化の描写が描けておらず、違和感を感じたが、もしかしたらカットされたのかもしれない。
また復讐の連鎖を扱った、ドゥニ・ヴィルヌーヴの灼熱の魂を思い出さずにはいられなかった。

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カメ

3.5こういうことか…

2020年6月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

パレスチナで生まれ育った若者
まず信仰ありき

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mamagamasako

5.0尊厳。 遠い国の話ではない。とても身近な話。

2020年6月12日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

悲しい

ラスト、目のアップの後、一瞬画面が真っ白になる。そして無音で流れるエンドロール…。
 これほどの余韻が残る映画が他にあるだろうか?ラストに向かって高まる緊張感。それが頂点に達してラストのシーン。
 混乱なんて言葉では表現できないほどの衝撃、カオス。チラシに「泣くことさえ許されない、衝撃の感動作」とあるが、それを体感する。

実際、鑑賞したのはもう数年前だが、衝撃過ぎて、ずっとレビューを書けないでいた。

作品解説にあるように、青年二人が自爆攻撃に向かう48時間の物語。
 毎日銃撃戦が起こり、ロケット弾が突風が吹くように飛んでくる日常。
 それでいてどこかのどかな田舎町のような暮らし。だが、将来を描けない閉塞感に押し包まれた雰囲気が伝わってくる。
 そんな中で、英雄になることを夢見る青年。
 裏切り者の父を持つがゆえに、”尊厳”を奪われて育った青年。
まるでノンフォクションのように、簡単な背景描写と二人の心理葛藤を丁寧に追う。
簡単な背景描写と書いたが、ニュースで報道されるような、対岸の岸からこの二人を眺めるような説明ではない。この二人がパレスチナ・ナブルスという街で、どう育ったか、どう生活をし、どういう未来を描いているか、それを家族や友人・仕事仲間、淡い恋に発展しそうな関係を織り交ぜて、隣に住む若者について語るように描かれている。
 そして、決行すれば、どうなるか。
     決行しなければ、どんな生きざまになるのか。
     青年にとっては、二者択一しか選択肢が見えないところが、やりきれない。

アクシデントで1回目の出陣がキャンセルになった後、幹部が二人に再挑戦するかをきく。その時の言葉が胸に刺さった。
 「日々の生活の中で小さい時から尊厳(自尊心)を粉々に砕かれて生きてきた。このままでは生きていけない。だからそれを取り戻しに行くことが大切なんだ」(のような事だったと思う)。
 物静かで、自爆攻撃にあまり乗り気ではなかった思慮深いサイードが熱を込めて言う。
 その言葉の重み。

この映画を観ていないのに、このサイードと同じことを言う日本の子ども達。一人や二人ではない。
 国や育つ環境が違うはずなのに、日々尊厳を踏みにじられながら育つ、多くの子ども。

閉塞感。その中でもがき苦しみ、自分という存在を確かめたいという想い。
 その実現が自爆攻撃でしかないという彼らの現実。
 頻発する無差別殺人。

遠い国のことではない。すぐ脚元に起こっていること。

「物事を”邪悪”と”神聖”にわけるのはナンセンスだ。私は複雑きわまりない現状に対する人間の反応を描いているのです」ハニ・アブ・アサド監督(チラシから)。

パレスチナ人監督が、イスラエル人プロデューサーらと手を組み、ヨーロッパ各国との共同制作というかたちで作り上げた作品(チラシから)。

たくさんの大人が見て、考えるべき映画です。

(JICA地球ひろばにて鑑賞)

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とみいじょん

3.5自由への闘い

Jさん
2020年4月30日
iPhoneアプリから投稿

こういった映画を見て現状を知ろうと思うきっかけになった。支配しようという人間の醜い欲。現在も続いているというのだから武力ではない方法で解決に向かってほしい。

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J

5.0自由になること

2020年3月22日
PCから投稿

あまりにも衝撃的で見終わったあと自分の頭の中が整理できなかった。
ウエストバンク内の北方のナーブルス(パレスチナ地区)というところしかしらない(外へは出られない)ナーブルスに住むサイード。
サイードは10歳の時、父親が内通者で裏切り物として処刑された。母親もサイードの父親のことを語りたがらない。不名誉なことだから。サイードの幼馴染と二人で、テレアビブでテロ自爆の指名を果たすはずだったが?!
ウエストバンクのどこへ行っても、イスラエルの検閲所ばかりで自由に動き回れず、監獄の中にいるようだとサード。彼がこの難民キャンプを出たことがあるのは一回だけだと。それは病気の時(?)。イスラエルの中でパレスチナの国もなく不自由に生きているなら、死んでパラダイスにいって自由になるだけだと考えている二人。そこにアブアザマム(Abu Assam)というa revered leaderリーダーの娘、スーハ(Suha)(Lubna Azabal)が現れる。パレスチナ人だがフランス生まれで、モロッコ育ちでウエストバンクに戻ってくる。西欧諸国の考えを知っているSuhaは自爆テロの行為に賛成していないし、イスラエル軍の軍事力を知っているから実用的で意味のある行動だと思っていないようだ。イスラム教は自殺を禁止しているし、それに、この行動は一般市民を巻き添えにすることや暴力の仕返しごっごになると信じている。『パラダイスは頭の中にある架空の場所だと』
サイードを探しながらスーハと幼馴染は車の中で討論したが、幼馴染は自分の意見を譲らず、自爆テロを実行するのみと考えた。
『不正義をやめさせる方法を見つけ出さなきゃ』とスーハ。

サイードにとっては、父の汚名を挽回することにより、家族が差別を受けなくてすむし、自爆テロを実行することにより、残りの家族の生活は保障されることを知っているし、この不公平の世の中に生きていることを捨ててパラダイスに行きたい。そうすれば、平等になると。平等に生きられなければ、少なくとも平等に死にたいと。

幼馴染はテレアビブの現状を見て、スーハの言葉の重要性に気づく。『スーハは正しい。自爆テロで我々は勝てない。』と。でも。。

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Socialjustice

4.0エンディングがなんとも言えない余韻を残してくれた

2018年11月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 サイードとハーレドという二人の若者。自動車修理工場でのやりとりを見ても、どこの国にでもいそうな今風の男たちだ。違っているのはそこが被占領地であること。平和な世の中で過ごしていると、彼らの心の奥底に潜んでいるものが見えてこないのかもしれない。

 まず驚かされたのが、普通に帰宅しようとしている人たちの近くで爆撃音がこだまするシーン。被害を被らないように皆一様に体を低くするのですが、その直後には何もなかったかのようにまた歩き出す・・・このような出来事は日常茶飯事なのだろう。

 そうしたパレスチナ問題が残るイスラエル占領地。サイードとハーレドがテルアビブでの自爆攻撃の任を与えられる。未来のある二人が仕事や家族や恋愛を顧みて悩み続けるのかと思っていたら、「英雄になれる」と喜んで命令を受けるのです。真っ先に思い浮かべるのが第二次大戦中における日本の特攻隊。その自爆という行為によってすぐに問題が解決するわけではないのに、積み重ねて礎となることが名誉であり、平和への糸口になると教え込まれているかのようだった。

 「死をおそれない者は天国に行ける」と信じている彼ら。先の見えない占領地においては、生きる希望よりも未来の祖国を祈る気持ちのほうが強くなるのかもしれない。また、圧倒的な軍事力を持つイスラエルに対抗できるのは自爆テロしか手段がなかったのかもしれない。しかし、英雄の娘であるスーハの言葉からもわかるように、解決の手段はどこかにあるはずなのです。

 映画の作りとしては、かなり真面目に取り組んであった。フレームの端でコーヒーだとかエキストラのちょっとしたアクセントも面白いし、一見して平和そうな場所から路地に入ると爆撃痕の残る建物が平然としているアンバランスさも見事に捉えていた。イスラエルへと侵入する場面だとかに緊迫感がなかったことが残念だったけど、二人の心情変化が対照的だったことが脚本の力を感じさせてくれました。

 パレスチナ問題を真摯に取り組んだ映画、しかもパレスチナ内部から、自爆テロ志願者からの描写なんて珍しい。欧米では敬遠されるような内容であるかもしれないけど、ファシズムによる戦火の中で戦っていたレジスタンスと意志は共通であろうし、歴史が変われば彼らの存在は尊い犠牲者として受け入れられることになるのでしょう。手段は間違っていても、平和な世界を夢見ていただけ。遠く離れた見知らぬ国であっても一傍観者であってはいけないのだと痛感させられました・・・

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kossy

2.5平等に生きる

2018年5月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

「平等に生きられなくとも、平等に死ぬことはできる」

「平等のために死ぬのなら、平等に生きる道を探すべきよ」

のやりとりが心に残った。

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もの語りたがり屋

3.5評価が難しい映画。見た方の感想がそのまま作品の良し悪しになります

2013年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

パレスチナの若者二人が自爆テロに向かうまでの物語。なぜ自爆テロをするのか、という難しい命題を、パレスチナに暮らす若者の目や人生をとおして、淡々とだけど見る者に切々と訴えかける、とても心に染み入る作品。しかも、決して自爆テロを正当化しようとはしてない演出は見逃せない。人が大事にすべきものは何か、殺すことで平和が訪れるのか、を問かける姿勢も素晴らしい。

 たしかに、プロパガンダの強いのは否めないし、演出もまだ甘い、構成がうまくないところもある作品ですけど、見終わって受けるショックは、そんな欠点を払拭してしまいます。東京では、恵比寿の東京写真美術館と渋谷のアップリンクくらいですけど、いろんな人に見てほしい、見終わったあとにいろんな意見を聞いてみたい、そんな映画でした。

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こもねこ

3.5どうにもならない現実

2013年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

総合:70点
ストーリー: 75
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 65
音楽: 60

 テロリズムというものを、自爆するパレスチナ側からとらえた作品。一方的にテロを敵視する西側映画ばかりの中で異色といえる。そして明らかな被害者であるパレスチナ人が中心となることで、テロに走る人々をわかりやすく描かれている。このあたりがどこかの国から侵略されているわけではないパキスタンやサウジアラビアといった国のテロリストと違う点であろう。

 イスラエルの占領政策によって、本来そこにいたパレスチナ人は経済的に窮乏しているばかりでなく、多くの圧迫を感じている。その中でまともな職もなく困窮した人々が、イスラエルに対して強硬手段に出るのはある意味当然の流れと言える。
 だがそれはイスラエルによる報復攻撃を呼び込み、それに対してイスラエルにさらなるテロ攻撃という負の連鎖を積み重ねてしまう。主人公は力による報復がさらなる不幸を呼び込むことに気がついていくが、だからといって何もしなくても不幸な現実がよくなるわけでもない。パレスチナ人が虐げられる以上はこの問題は続くだろう。
 結局テロを思いとどまるものがいたとしても、テロを続けるものはなくならない。彼らは被害者であるから加害者となったのだから。有効な解決策は今のところない。イスラエルとパレスチナが共存共栄の道を選ばない限り、この問題は続いてしまう。

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Cape God

4.0世界は破滅を待っている。

2012年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

難しい

パレスチナの若者二人が、殉教の名のもとに自爆テロに向かう姿をリアルなセリフと臨場感あふれる映像でみせる。

ゴールデン・グローブ賞最優秀外国語作品賞を受賞した作品。

何をすれば良いのか分からない。西側諸国に比べて国はまだまだ貧しい。この国に生まれたことが不幸なのか?未来はどこにある?二人の若者は不毛の会話を続けて殺伐とした風景の町を彷徨う。

親や周りの人々にある種の自分達の存在を示すにはやるしかないのか?

こころを決め組織の幹部のところに顔を出す。

いろいろ手順を聞き、裏切り、逃亡、心変わりのないように脅されて
爆弾を腹に巻き外に出る。

その先は・・・。

所詮日本では他人事。

だが、この国に生まれた者は何が善で何が悪か教えはひとつ。

こころが冷え冷えとする物語。

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みっどないと・シネマ

4.5中東紛争の一側面を描く

2010年1月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

一言で表すと、かなり
『ドギツイ映画』でした。

自爆テロそのものが、日本からすれば
ありえない存在ですし、実行に向かおうとする人達の
心情を精緻に理解しよう、ということに無理があります。

イスラエルと中東諸国との争いが
根源に描かれていますが、血を流さずに
解決する道は残されていないのでしょうか。

そのことの問題提起と、自爆テロシーンが
映像で描かれなかったことが、せめてもの救いでした。

ただ、イスラエル側にも言い分はあるのでしょうね。
そうでなければ、ここまで長年にわたって拗れていませんよね。

欧米が同作品を高く評価したことが、
平和への貴重な一歩になると信じたい気持ちで一杯です。

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septaka