「納得のはまり役」バッテリー yukinko-dayoさんの映画レビュー(感想・評価)
納得のはまり役
原作既読。巧、豪、サワ、東、青波等、キャストが原作から抜け出てきたようだった。
巧の祖父を演じた菅原文太が素晴らしかった。ともすれば説教臭くなるセリフが、自然と頭に入ってきた。
主演の林遣都は、ガラスでできたナイフみたいな原田巧を体現。ものすごい美少年。容姿だけでなく、今、この瞬間しかない少年としての美があった。なるほど、原田巧はこういう姿をしていたのかと納得した。
巧の弟の青波は、天使のよう。こんなに可愛くて病弱な弟がいたら、親の関心が弟に集中し、原作で巧が鬱屈していたのも納得。映画ではその感情は殆ど描写されていない為、原作既読の方が楽しめるだろう。
ストーリーは、原作1、2巻をメインに巧中心に整理整頓し、よくまとまっていた。原作は3巻以降、他キャラ中心になり軸がぶれた為、一つの作品としては映画の方が出来がいい。
ただ、「巧の野球は祈りで、病弱な弟の為に野球をしている」と父がラストで述べたのは、原作と真逆。原作では、野球に呪縛され、自己存在の証明の為にボールを投げる少年だからだ。その難しい気質をそのままやると泥沼にはまる為、変えたのだろう(原作も作者が巧を描けなくなり、実質未完で投げ出された)。
そんな泥沼な原作を、友情、家族愛をテーマに再編したのは正解だったと思う。直球で優しく穏やかな、いい作品となった。
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