「骨密度測定器があの値段だったら安いぞ・・・probably」幸せのちから kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
骨密度測定器があの値段だったら安いぞ・・・probably
6ヶ月間無給で研修なんてやだっ!などと思いつつも、数学の才能も生かしたかったのだろうし、就職難でもあったのだろうしと、色々と考えさせられました。それにしても当時のアメリカは住みにくいところだったんですね。モーテルで暮らすのよりアパートのほうが家賃が高いし、低所得者にとっては何もかも高くて税金だって酷い取立てだ。詳細には描かれてなかったけど、多分人種差別もひどかったのでしょう・・・possibly
何の予備知識がなくともサクセスストーリーだとわかる映画でもありますが、主人公のクリス・ガードナー(ウィル・スミス)の転落の仕方が凄まじいほどだったし、彼の実の息子の演技も自然で、父親を信じていることがとても愛らしく感じられます。クリス自身、28歳になるまで父親に会ったことがないという経験上、息子と一緒に過ごしているだけで幸せへの近道だと感じていたことも伝わってきます。キャプテン・アメリカの人形を道に落としてしまっても、屋根のある教会の部屋を確保できれば息子のためになるんだと、ハグしながら息子と一緒に悲しむ姿が忘れられないくらいでした。
なにやら怪しげな医療機器だってタイムマシンだと思えば夢を与えられる。洗濯機よりはファンタジーを感じますもん。このおかげで「洞窟だっていいよ」といった息子の言葉に泣けてきました。また、クリスは売り物の測定器を何度も盗まれますが、盗んだ奴を捕まえても殴ったりはしません。おそらく盗んだ者だって自分と似たような境遇である思ったに違いありません。しかし、そんな優しいクリスでしたけど、タクシーの無賃乗車だけはいただけません。何とか金を後払いする方法だってあったはず・・・デ・ニーロ(『レイジング・ブル』の宣伝用)の看板をつけてるくらいだし、撃ち殺されても文句は言えない・・・
ストーリーは主人公がどん底を何度も味わう展開となり、勝ち組万歳となるような従来のサクセスものとは一味違った感じ。エンディングにしたって、数行の説明はあるものの本当に幸せを掴んだのかどうかは定かじゃない。それでも、終盤に「明日に架ける橋」(ロバータ・フラック)の曲が成功への橋渡しとして絶妙のタイミングで流れてくる。いい選曲だなぁ・・・他にもアパートの部屋のペンキ塗りのシーンでジョージ・ベンソンの「マスカレード」が聴けたり、スティービー・ワンダーが聴けたりと、なかなかセンスがいい。ストーリーの不足分を補ってくれたと思います。
【2007年1月映画館にて】