無花果の顔 : 映画評論・批評
2006年12月26日更新
2006年12月23日よりシネマスクエアとうきゅうほかにてロードショー
監督の生き様がストレートに出た一筋縄ではいかない作品
桃井かおりの初監督作は、やはり、一筋縄ではいかない作品だった。どこにでもいるような門脇家の4人のドラマなのだが、家族はそれぞれ一人芝居のように勝手にしゃべって会話は噛み合わず。時間は説明なしに飛ぶ。そして映像は突如、アニメになったり、門脇家が撮影スタジオ内に建てられたセットだと分かるように見せたりと、桃井監督は映画作りの常識を鼻で笑いながら壊していく。下手すれば独りよがりの実験映画と片づけられそうだが、そこを踏みとどませたのが初監督を支えるべく集結した映画職人のワザだ。
釘宮慎治(「蝉しぐれ」)のカメラは付かず離れずいる家族の微妙な距離感を見せ、伊藤佐智子(「春の雪」)のカラフルな衣装は家族の個性を際立たせ、木村威夫(鈴木清順作品)の郷愁呼ぶセットと中村裕樹(「世界の中心で、愛をさけぶ。」)が作り出す暖色系の光が、バラバラなようでも、いざという時には互いを思いやる門脇家の人たちの優しさや絆の深さを映し出していく。
一見、破天荒なようで、最後までブレることないテーマと作品カラー、そしてプロとしてのこだわり。それは、時にワガママと言われようが、女優一筋に歩んできた桃井監督の生き様そのもの。作品には監督の人間性が出るのだ。
(中山治美)