「見えぬものとは何か」ゲド戦記 セロファンさんの映画レビュー(感想・評価)
見えぬものとは何か
原作は未読です。公開時映画館で観たのですが「よくわからなかった」という印象しか残っていませんでした。先日、金曜ロードショーでやっていたのを何となく観ていたのですが、内容をほとんど忘れていた為か、冒頭、アレンの父親殺しが衝撃的でこんな映画だったっけ?と思いながら、最後まで観ていました。もう一回観たい!とまでは思いませんが、最後まで静かに引きつけられる映画でした。
物語の世界では、疫病や農地の荒廃が各地で広がり、少しずつ世界の均衡が崩れ始めています。異変に気付いたハイタカは世界のバランスを乱す根源を探す旅に出ます。
光と影。生と死。これらの‘バランス’。バランスって何だろう?影があるから光が輝けるのであり、死があるから生が尊い。両方のバランスを保つ事で世界の均衡が保たれる。言葉ではわかるのですが、抽象的すぎて私にはまだピンときていません。
安心と不安。愛情と憎悪。冷と熱。。。真逆だけど二つで一つ。どちらか一つのみでは存在できない。形や大きさ、感じ方はそれぞれであれ、誰の中にも存在するもの。その見えない形無きもののバランスが崩れると、アレンのように不安に駆られたり、更に重症化するとクモのように死を恐れるあまり生に執着する化け物になってしまったりするのかもしれません。
‘見えぬものこそ’ 映画のポスターにはそう書いてありました。アレンは見えない影に常に怯えていました。「自分の中にはもう一人の自分がいる」アレンはそう語り、もう一人の自分の存在から逃げ続けています。
影の存在ってきっと誰の中にもあるものだと思いますが、おそらく感じる力の強いアレンはその影を敏感に感じ取り、恐怖に駆られ心のバランスを崩していきます。クモの館で抜け殻状態になっていたアレンはテルーの助けで影の存在と向き合い、受け入れられるようになります。
確かによくわからない何かって怖いし、不安にもなります。でもわからないからといって逃げ続けていたのでは、いつまでも怖いままです。一度冷静になって立ち止まり、その見えない何かと向き合えば、「なんだこういう事だったのか」と一気に解決する事もあります。見えぬものこそ、きちんと見て向き合う。何事もまずは知る事から!そんなメッセージも感じ取れます。
余談ですが、、、
光と影とか、バランスと聞いて、スターウォーズを連想してしまいました。そして、すごく強いのに影の存在に怯えバランスを崩していくアレンの姿はアナキンスカイウォーカーと重なります。憎しみや恐怖に呑み込まれダークサイドへ墜ちていったアナキンと、バランスを取り戻したアレンの差って何だったのでしょう?とも考えたりしました。