蟻の兵隊

劇場公開日:2006年7月22日

解説・あらすじ

第2次世界大戦終結後、中国に残留して内戦に巻き込まれた日本兵を巡る“日本軍山西省残留問題”にスポットを当てたドキュメンタリー。軍の命令に従って残留した約2600人の兵士たち。ところが政府はその事実を否定し、彼らを脱走兵として扱った。国を相手に裁判を続ける残留兵のひとりである奥村和一が、真相を求めて再び中国を訪れる。メガホンを取るのは、デビュー作「延安の娘」が世界中の映画祭で絶賛された池谷薫。

2005年製作/101分/日本
配給:蓮ユニバース
劇場公開日:2006年7月22日

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映画レビュー

5.0 報われない働き蟻の生き様

2025年9月15日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

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てつ

5.0 2025年8月15日に思うこと

2025年8月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

80回を迎える終戦の日。
終戦を迎えた後も、上官の命令で山西省に日本軍として残り、国民党と共に、中国共産党と戦った人々がいたことを知った。
「皇国の復興を本義とす」と服務規程に記した彼らの存在は、武装解除を定めたポツダム宣言に真っ向から反している。そのため「国」としては、「彼らはあくまで志願兵として残留した」として、軍人恩給も支給していないし、彼らの起こした訴訟も、2005年に上告棄却で敗訴のまま終わっている。

今作は、訴訟団の一人、奥村和一さんへの密着を通して、日本軍の中国での行いや、戦時の軍隊の中での兵士の心理、そして今も奥村さんの心の中に残る「無抵抗の人を殺した葛藤」について赤裸々に描き出している。

上官の命令には絶対服従を叩き込まれて、終戦後も中国の国内の争いに巻き込まれつつ「天皇陛下万歳」を叫んで戦死した兵士たちに対し、厚顔無恥な司令官は、東京裁判を逃れ、戦後ものうのうと生き延びたという現実。

現在、「虐殺はなかった」「あれは侵略戦争ではない」「慰安婦は自ら望んだセックスワーカー」といった言説をまことしやかに語る人々をよく目にするし、感覚とすると、一頃の新しい歴史教科書問題の頃より、確実に増えているように思う。そして、そうした人たちは、こぞって愛国を語り、反対の立場の人々を「反日」と断じて冷笑を浴びせるが、その人たちが愛する「国」というのは、犠牲にできる者をトコトン犠牲にして、「ずる賢く立ち回って逃げ切ることが最上の価値」というデストピアのことを指すのだろうか。
ぜひ、この映画を観た後の感想を聞いてみたいものだ。(多分観ないだろうが…)

自分自身も、そんなシニカルなことを考えた、2025年8月15日。

※山西残留問題について、「オーラルヒストリー企画」の「山下正男」氏のインタビューがとても参考になった。(「 」内の言葉で検索すると、インタビューリストの中からたどりつける)
映画をご覧になられた方は、描かれていたことの背景が見事にクッキリと見えてくると思うので、ぜひご一読をオススメしたい。

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sow_miya

3.0 「複数性」に耐えうるか

2020年8月14日
iPhoneアプリから投稿

正直、ところどころ観ていて不愉快になる映画だ。

上官の指示で戦争が終結したのも知らされず、大陸に残された約2600人の日本兵たち。信じてきた国に対して裏切られた気持ちを考えると、同情できる部分も多々ある。

しかし、彼らは大陸で数多くの殺戮行為をおこなってきたのは紛れもない事実。
自身の残虐行為を棚に上げ、他人事のような発言が気になる場面がいくつかある。
冷静な判断ができない状況であることは十分理解できるが、なぜここまで上官の指示を聞き続けなくてはならなかったのか。
(なぜ逃げなかったのかと)中国の生き残りの親族に詰め寄るシーンがあったが、自分たち残留兵も何故逃げるという選択肢がなかったのか。

戦時総動員体制下、軍人も民間人も人間本来の「考える」機能を失っていく。それが全体主義の恐ろしさ。

日本には被害側の立場で描かれた作品は多いが、本作のように加害者側をクローズアップしたものは少ない。そういう意味で、後世に残すべき作品である。

多くのバッシングを覚悟して、カメラの前に立ったであろう、奥村氏の勇気を称えたい。

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atsushi

4.0 日本人の敵は日本人

2020年8月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

何時の時代も日本人の敵は自分たち日本人である。組織の幹部クラスが部下を殺す。その構造に対して否を突き付けない卑屈で惨めな精神しか持ち合わせない一般的な日本国民が自らを殺すのである。私たち一人一人の絶対的な気付きを得られるまで、この不幸は続く。日本人は自ら自殺を選択し続けているようなものだ。

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shanti