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途中まで日本での裁判の動きの話が続く。
中国に渡り、中国人たちから、共産党軍と国民党軍と日本軍との戦いの様子が語られ始める。公文書館で、日本語の文書を確認し、日本軍の指揮官と国民党軍の指揮官との間に取り決めがあったことが書かれていることがわかる。主人公は、自分が初めて人殺しをした場所に連れて行ってもらい、上官の命令で何度も突き刺した様子を身振りを入れて話す。殺すことになっていた中国人のうちで逃げ出した者の息子と孫と面会して、逃げた中国人の事情を訊くと、その中黒人は共産党軍人ではなく、むしろ日本の鉱山を警備していた者で、共産党軍に投降したために、懲らしめることになったという。主人公は、その事情を聴いて、目の前の人々を責めるという見当違いのことをしてしまい、監督から窘められていた。日本軍人たちが中黒人女性たちを陵辱していたという文書も映し出された後、当時16歳で被害の遭った女性の証言があり、主人公は謝罪しないばかりか、逆に主人公がその妻に秘密にしていることについて話すように慰められていた。帰宅後、食卓で妻と和やかに食事をしている場面だけが映っていた。
靖国神社に戦争経験のない若い人々が軍服姿で詣で、次の戦争では負けない、と嘯き、小野田寛郎氏も挨拶に立ち、主人公が話しかけるが相手にされない。小野田氏も、『木の上の軍隊』の上官ほどには改心できていないのかもしれないが、本心はよくわからない。靖国神社での取材は、映画『靖国』ほどには被写体の人々から問題にされなかったのだろうか。
再度中国の公文書館で、日本軍指揮官が国民党軍指揮官の手引で安全に日本に帰ったという記述が示されていた。日本に戻り、関係者と連絡を取り、一人の家に訪ねて行ったが相手にされず、悔しい思いをする。最後は、最高裁上告が公開法廷も開かれないまま棄却され、事実が闇に葬られることになったということが字幕で示されたのみである。題名のように、末端のものは、働かされるだけ働かされて、報われないまま、やはり切り捨てられて終わるようであった。