「どうしようもない世代格差」胡同(フートン)のひまわり Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
どうしようもない世代格差
総合:60点
ストーリー: 60
キャスト: 70
演出: 75
ビジュアル: 70
音楽: 70
前近代的時代に育った親としては、子供は親のために存在するし親に尽くして当たり前と思い込んでいるのだろう。特に文化革命という大変に不幸な時代の渦に巻き込まれた父親にしてみれば、自分の人生が奪われたから夢を子供に託したいというあまりに強い思いがあるに違いない。だが物心ついたときにはすでに改革解放の時代だった子供にしてみれば、自分の人生を親に好き勝手にされ、自由も人権もないような生活が楽しいはずがない。
こういう親は日本でも戦前にはいくらでもいただろうと思う。もうあまりに考え方が違うのだから、これで分かり合えるはずなど無いだろう。親子だといっても埋められない違いがあるものだ。結果的に息子の絵の才能が開花したから救われたとはいえ、そうじゃなければ目も当てられない。
映画としてはそれなりに質が高い。一つ一つの場面の描き方は時には瑞々しいし、また親子関係の愛情や軋轢をうまく描いている。しんみりと静かに流れる音楽と合わせて、どうにもならない苛立ちや悲しみの雰囲気が全体に漂う。次々に壊される古い街並みの映像が、古い時代の人の考え方や価値観がもう時代遅れなのを暗示しているよう。実際私が直接見た中国の都市の古い町並みが壊され廃墟となり消え去っていく様子はまさにこのままでした。
だがこのような自分の考えを強引に押し付けてくる親というのが個人的に嫌いなので、どうにも見ている私も少々苛立ちました。私が息子ならば父親のことなど無視して広東に逃げてたと思います。物語の内容に反発するのではなくて、ただの映画として距離をとって見れる人にはいいと思います。このような人は実際いるだろうし、その葛藤を描く物語が悪いのではない。だが映画の最後がどうなろうが、こういう人がやはり嫌いなのです。