マイアミ・バイス : 映画評論・批評
2006年8月22日更新
2006年9月2日より日劇1にてロードショー
視覚と感情の作家マイケル・マンの集大成
80年代に大ヒットしたTVシリーズをオリジナルの製作総指揮を担当したマイケル・マンがリメイクしたこの作品には、あのMTV調痛快バディ・アクションの面影は微塵も見られない。MTV調はベイ(「バッド・ボーイズ」)あたりに任せておけばいいとばかりに、出来上がったのは「インファナル・アフェア」や「ナーク」も顔負けのヒリヒリするようなリアル・アクションで見せる潜入捜査映画。だが、これこそ紛れもなく視覚と感情の作家マンの映画、彼の嗜好とスタイルを突き詰めた集大成ともいうべき傑作である。
処女傑作「真夜中のアウトロー/ザ・クラッカー」からマン作品の魅力はリアルなアクション描写にあった。今回は全編HD撮影の機動力を駆使してライブ的臨場感もプラス。拉致された仲間の救出からクライマックスの大銃撃戦まで、リアルさの中に仲間への情と悪への落とし前など、男の映画の基本と伝統はきっちりと押さえた胸のすく仕上がり。ルックスより演技力を重視したキャスティングも作品にリアリティを加味している。
もちろん、マン作品のもうひとつの魅力であるお約束の過剰に美しい恋愛描写も忘れていない。コン・リーが従来の愛玩動物的扱いのアジアン・ヒロインとは一線を画す、堂々たるハリウッド映画のヒロインを圧倒的な存在感で魅力的に演じているのも見逃せない。
(江戸木純)