劇場公開日 2021年4月2日

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「アニメーションからの果たし状」時をかける少女(2006) かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0アニメーションからの果たし状

2009年10月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

幸せ

自ブログより抜粋で。
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 近ごろのCG技術の向上に伴ってどんなビジュアルでも実写として映像化できるようになり、往年の名作アニメ群が次々と実写映画化されているのは周知の通り。さらにこの流れが進むとアニメーションって必要なくなるのかも、とさえ思えるほどだ。しかしこのアニメ版『時をかける少女』は、そんな時流にも揺らぐことのないアニメーションの優位性を我々に突きつける。
 そもそも細田監督が、何度も実写化されているこの題材をあえて選んだことも、アニメーション監督としての彼自身の挑戦であると同時に、アニメーション作品の安易な実写化に対するアンチテーゼではないのか。アニメーションの独壇場だった分野を実写が取り込もうとするこの時代に、実写が得意とした分野へアニメーションで切り込み、凌駕してみせたこと。その意味は想像以上に重い。
 実写化不可能な被写体など無くなりつつある今、アニメーションを必要としているのは、アニメでないと映像化できない素材ではなく、アニメでないと実現できない映像表現なんだと、この素材を丁寧に料理してみせた細田演出は物語っている。と同時に、驚愕に値するその完成度は、逆説的にアニメ的表現に満ちた名作アニメを実写化するには相応の覚悟が必要であることをも知らしめる。
 このアニメ版『時をかける少女』は、次世代を担うアニメ作家たちの一つの指標となるばかりでなく、実写の世界に生きるスタッフたちこそが危機感を持たなくてはならないアニメーションからの果たし状なのだ。

かみぃ