「設定がいかにも漫画だけど、だからこその見所も多い」デスノート Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
設定がいかにも漫画だけど、だからこその見所も多い
総合70点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
原作の漫画は未読だが、内容はいかにも漫画らしく突然の突拍子もない出来事が起き、その設定がこの作品の中心となる。そんな話だけれども、死神のCGも、漫画らしい変人ぶりな動きを恐らくそのまま実写に取り入れたエルの演技も、意外と違和感なく受け入れられた。死神も含めて登場者の多くは個性があってわかりやすく、むしろ存在感の強さに好感がもてた。
そうはいっても、物語の舞台を作って面白くするためだろうが、死にかたを決められるとか、死の直前の行動を決められるとか、デスノートに関して色々なことを自由に設定出来てしまうというのは、作者の狡さというか作品構成上の都合のよさみたいなものを感じてしまう。でも設定を細かくすればするほど、観ている側として重箱の隅をつつくような疑問や不自然さを感じざるを得ない。一学生が警察の捜査班に普通に入れちゃうとか、海外担当のCIAではなく本来はアメリカ国内の捜査を専門にするFBIが何故日本で活動するのとか、何かと緩い部分が気になる。
それに死神なんていう反則技の脅威が出てくるのならば、まともな法律に基づいた捜査なんかしないで、非合法な方法で問題を解決しようとする勢力が出てきちゃうんじゃないの? 実際、アメリカがこの問題に気がつきながら、ただの犯人捜査くらいで大人しくしているとも思えない。まあいいんですけどね、所詮は少年漫画なんで、楽しませてさえくれれば。
内容は、人は他人を自由に殺す力を得たときに法律を無視して悪人を殺してもいいのかという倫理を問う問題と、その力を使う人はどのような人物なのかという興味、そして自らの犯罪を隠すためのエルとの頭脳勝負という点で見所が多い。悪人だけでなく罪無き人々も自分の都合で殺し始めた主人公の暴走はどうなってしまうのかと、主人公に対する嫌悪感と共に、今後への興味も出てくる。
主人公は自分では頭がいいと思っているんだろうけれど、大学生としてはたいしたものだが、経験も浅いし組織力の凄さもわかっていないようだし自分を過信する性格に幼さがあるし、大人からみれば彼自身が評価するほどの頭脳があるわけではないのは明らか。その意味ではヒッチコックの『ロープ』に通じるところも感じる。この程度で自分を優秀だと思い込めるくらいだとどうせ破滅するんだろうなと、この前半を観ている今のところは予想している。とりあえず後半に期待しよう。