劇場公開日 2006年10月28日

「銃後と前線の間で」父親たちの星条旗 Gonzoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0銃後と前線の間で

2017年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

どこから来るともしれない銃弾や白兵戦を挑んでくる敵兵によってあっけなく惨たらしい死が訪れる戦場と、 日常が繰り返される米国本土との間で映画は揺れ動く。そのどちらも3人の兵士には過酷だった。戦時国債を売る広告塔として強いられる虚偽に精神がむしばまれていく姿は、特にアイラの描写で胸が痛む。アルコールへの耽溺、容赦なく浴びせられる差別的言辞などは目をそむけたくなるほどだった。
その後の3人の結末はそれぞれであるが、ひたすら物悲しい。浜辺のシーンはせめてもの救いのように見えるが、その後に続く写真は現実とのつながりを再確認するもので、心に重いものを残す。

戦時国債の話で意外だったのは、物量豊富な米国はその引き換えに
財政がひっ迫していたということ。第二次大戦時に財政赤字は対GDPで30%にも達していた。なんとなく財政的にも余裕があったというような印象があったが実際はそうではなく、本作品の物語の背景をなしている。

なお、二回目の写真に写っていたのは”ドク”ではなく別の兵士であったと2016年には公式に訂正されている。そのことを踏まえるとより”ドク”の心中がより慮られるのである。

Gonzo