「一流のサスペンス!オリンピックの前に観るべき作品」ブラック・サンデー あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
一流のサスペンス!オリンピックの前に観るべき作品
数万人で満員のスタジアムに迫る巨大な飛行船のビジュアルは大変に有名
それだけでお話の筋がわかるシンプルさ
しかし内容は圧倒的に濃い
テロリストもプロなら、対抗するイスラエルの秘密情報部モサドもプロ
しかしプロでも躊躇もすれば思わぬ齟齬もある
冒頭のテロリストのアジト襲撃で女テロリストを躊躇って殺さなかったばかりに物語が始まる
アマチュアとはいわないがアメリカの地元警察はもちろんFBIまでも舐めてかかるとバタバタ殺される
プロ同士の殺すか殺されるかの文字通りの死闘を手に汗握るストーリーと緻密なプロットを巧みな構成と演出で見せる
子供騙しは一切なく、そんなアホなというシーンは微塵もない
中盤、捕まりかけたテロリストがわざと浜辺に向かって逃げる
わざと殺される為あるいは入水自殺するためだ
それしか考えられないと説明抜きに展開する具合だ
ベトナム帰還兵が精神に異常をきたしテロを起こす
もちろんランボーの元ネタと言えよう
本作の5年後の作品だ
空から数万人の人々にテロを行う
これは22年後に911として現実化した
テロをする側にも理由はあるが、もちろんテロは阻止されなければならない
その為に殺し殺されることが果てしなく続く
主人公は殺し続けることに疲れたと正直に吐露する
その弱気が結果的にテロリストに同僚やアメリカの捜査員や民間人が大量に殺される事態となったのだ
テロリストはどの様な理由があろうと殺人鬼だ
情けをかければ誰かが死ぬ
自分かもしれないし、恋人かも知れない、子供や肉親がテロで死ぬかも知れないのだ
本作には日本人テロリストが登場する
そしてテロリストに爆薬を瀬取りさせて幇助する日本人の貨物船船長も登場する
卑劣な大量殺人を計画しているテロリストそのものとして、あるいは金でテロリストに協力する人間として描かれているのだ
もちろん70年代当時に日本赤軍の数多くのテロが世界中を震撼させていたからに他ならない
日本人もテロリストの有力メンバーだという目線なのだ
本作で描かれるようなテロは遠いベトナムや中東やアメリカの話ではない
つまり日本に関わる映画だという目線で日本人は観るべき映画なのだ
現に本作は日本に於いて公開時に爆破予告で公開を中止させられるというテロの餌食になっているではないか
本作の中で日本人テロリストが殺されることに怒り爆破予告テロを起こした人間が日本にいるということだ
来年は東京オリンピックだ
数万人の人間が集まる会場は連日複数箇所になる
テロリストには格好の標的になるだろう
テロリストは外国人だけなのだろうか?
いや日本人にもプロのテロリストがいるのだということを本作は思い出させてくれた
日本の警察や公安当局が本作で描かれるモサドのように無慈悲で本当のプロであるのかがこれから試されるのだ
その結果は日本人とオリンピックを見に来た世界の人々の人命の安否として現れるのだ
恐ろしいことだ