劇場公開日 1960年9月15日

「【”これで、良いのか!”政治汚職の深い深い深い闇を描いたサスペンス映画。黒沢明監督の先見性に驚くとともに、今作で描かれた事と類似した事件が現代でも数々起こっている事に戦慄する作品である。】」悪い奴ほどよく眠る NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”これで、良いのか!”政治汚職の深い深い深い闇を描いたサスペンス映画。黒沢明監督の先見性に驚くとともに、今作で描かれた事と類似した事件が現代でも数々起こっている事に戦慄する作品である。】

2025年5月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

難しい

■土地開発公団の副総裁・岩淵(森雅之)の娘、佳子(香川京子)と、岩淵の秘書・西(三船敏郎)の多数の来客が参列する披露宴が始まる。
 だがその直前に公団の和田課長補佐(藤原釜足)が逮捕され、披露宴に検察のモノ達が詰めかける中、会場は異様な空気に満ちていた。
 その頃、検察への密告状によって、公団と大滝建設の贈収賄事件が摘発寸前まで進められていた。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・序盤は、土地開発公団の副総裁・岩淵を”トップ”とする贈収賄事件により、父が贈収賄の罪を被せられた自殺した西が、戸籍を戦後に知り合った悪友板倉(その前の名は西)(加藤武)とすり替え、岩淵の秘書になり、更に娘と結婚する様が描かれて行く。
 衝撃的なのは、西(板倉)の父が、身を投げた公団の形をしたウェディングケーキが登場し、更にはその七階の一室には花が刺さっているシーンである。

・物語は、西がその本性を現しながら、妻となった佳子に対し想いを持って行く様と、彼から真実を告げられた佳子の苦悩のシーンに繋がっていく。
 このシーンを見ても、西の心の隅には善性がある事が伺える。

・だが、物語は恐ろしい結末で終わる。西は何者かに捕らえられ、アルコールを飲まされ自動車事故に見せかけた手段で殺されるのである。
 その事を知った板倉は、その場に来た佳子とその兄辰夫(三橋達也)に、激しく憤りながら、”これで、良いのか!”と叫ぶのである。

・そして、本来、贈収賄罪で裁かれる筈の土地開発公団の副総裁・岩淵のところに電話が入り、彼は”ほとぼりが冷めるまで外遊していろ。”と言われ、ほっとした顔になり映画は終わるのである。
 何とも、後味が悪い映画である。

<だが、現代でも同様の事が多数起こっている事は、ご承知の通りである。
 モリカケ問題は自殺者を出し、あれだけ国会を揺るがしたのに、当時の首相夫妻の関与は曖昧なまま下っ端の夫婦が立件されて終わり、その首相暗殺事件により明るみになった多数の与党有力議員と新興宗教団体との関係は、今でも最終的な決着はしていない。
 パワハラ知事問題でも、複数の自殺者が出ているのに知事はシレっとSNSを活用し、再選されて、反省した顔をしながら知事の座にいる。
 今作は、当時から問題になっていたという政治汚職をテーマにした社会派サスペンスであるが、エンターテインメント作品としても一級品である。
 黒澤明監督の先見性に驚くとともに、その映画製作の手腕にも改めて脱帽する作品である。>

NOBU
PR U-NEXTで本編を観る