劇場公開日 1960年9月15日

「忠誠心と正義」悪い奴ほどよく眠る neonrgさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0忠誠心と正義

2016年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、VOD

興奮

知的

企業汚職という現実の闇を背景に、忠誠心と正義の衝突を描いた異色のサスペンス。主人公・西(三船敏郎)は父の死をきっかけに復讐を遂げようとするが、復讐対象の娘を愛してしまったことでその正義が揺らいでいく。その葛藤は決して大声では語られず、口笛やタバコの所作といった沈黙の演技で滲み出る。三船らしからぬ抑制の効いた演技が、この作品の静かな緊張感を生んでいる。

和田課長補佐(藤原鎌足)は、一見頼りないが、誠実さと優しさを併せ持つ存在として、観客の「こうなってほしい」という願いを代弁する。しかし物語はその願いを裏切る形で進み、和田もまた翻弄される。そこにこそこの作品の本質――「現実は希望通りにはいかない」という黒澤の厳しい視線がある。

正義は果たされず、忠誠心もまた報われない。それでも愛する者を守ろうとする意志が、最後にかすかな救いとして残る。まるで希望を差し出してからそれを突き放すような構造は、観客に深い問いを投げかける。何のための忠誠なのか?正義とは何か?そして、なぜ悪い奴ほどよく眠れるのか?

複雑な構成と心理描写が見事に噛み合い、一見シンプルな物語の裏に普遍的なテーマが息づく。観るたびに違った面が見える、観るものに永遠のテーマを投げかけてくれる作品。

(2016/02/11 記載)
「サスペンス映画の傑作」
片刻も目が話せず151分があっという間。
主人公の三船敏郎をはさんで公団の課長補佐役の和田(白髪のメガネ)と
加藤武が天使と悪魔のように配置されたカット。
三船が天使の方を向きその話に従ってもうまくいく訳ではない。
理想主義者が喜びそうな展開にうんざりさせられるのか思いきや・・・。
政治サスペンス映画としても屈指の出来であります。
96点

neonrg
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