「ラストシーンに向けた積み上げが最高」Love Letter 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーンに向けた積み上げが最高
ちょうど30年前、1995年に初公開された名作。今回公開30周年を記念して4Kリマスターでリバイバル上映されることになり、観に行きました。私が初めて本作を観たのはごく最近の話で、昨年5月に公開された日台合作の「青春18×2 君へと続く道」の元ネタであることを知り、本作を観るためにU-NEXTの契約をして観たので、当然劇場で鑑賞したのは今回が初めてとなりました。
そんな訳で、ストーリーが分かった上での鑑賞となりましたが、劇場で集中して観ることが出来たこともあり、もう一度目頭を熱くすることに。「青春18×2 君へと続く道」もそうですが、過去と現在を行き来しながら、切ない恋心を表現する1人2役の中山美穂の演技はもちろん、本作が長編デビューとなった岩井監督の脚本や演出も流石の一言でした。
特にラストは秀逸で、中学校の図書委員の後輩たちが、藤井樹(中山美穂)の自宅を不意に訪問し、プルースト「失われた時を求めて」の本を持って来て、その図書カードの裏に樹(柏原崇)が書いた樹(中山美穂)の似顔絵が書かれているのを見つけるシーンは、今思い出しても涙が出そうになるほど非常に印象的なシーンでした。このシーン、2人の藤井樹が中学時代に共に図書委員だったこと、藤井樹(柏原崇)は絵が上手かったこと、樹(柏原崇)が樹(中山美穂)に「失われた時を求めて」の返却を頼んだのが、2人の樹が最後に会った場面だったこと、大人になった樹が中学校を訪れて当時の先生に再会し、さらには図書委員の後輩たちにも会ったこと、その時に図書カードに書かれた「藤井樹」という名前が後輩たちの間で話題になっていたことなどなど、それまでに展開された場面を一気に思い起こさせる完璧なラストシーンであり、本当に最高でした。
勿論樹(中山美穂)が、樹(柏原崇)の遭難した山(撮影は八ヶ岳山麓で行われたらしい)に向かって「お元気ですか~、私は元気です」って言ってる有名な場面も良かったんですが、このシーンすらもラストの盛り上がりに向けた布石のように思えてしまうほどでした。
俳優陣に関しては、中山美穂がパーフェクトな活躍を見せており、昨年突然亡くなられたことが本当に残念でなりません。豊川悦司は、2.5枚目を演じていて、最近のハリソン山中(「地面師たち」)のような気色悪い演技ではなく、ある意味非常に新鮮でした。あと、樹(中山美穂)の祖父を演じたクマさんこと篠原勝之の熱演も印象的でした。
そんな訳で、本作の評価は★4.8とします。
樹を図書委員に紹介するシーン、不自然だし必要性も感じず見てました。
有名人でもなく何か指導するでもないのに、何故…?
それが最後に繋がって、納得。
まぁ不自然なのは不自然なままなんですけどね。笑