「「溥儀」は歴史の中で「政治体制」に巻き込まれる悲劇の「狂言回し」にしか過ぎない」ラストエンペラー シネマ大好きさんの映画レビュー(感想・評価)
「溥儀」は歴史の中で「政治体制」に巻き込まれる悲劇の「狂言回し」にしか過ぎない
これは見事な作品だ。絢爛豪華とは、まさにこの作品を指す。
清朝最後の皇帝である愛新覚羅溥儀の伝記映画のカタチを採っているが、実はベルナルド・ベルトルッチの思惑は異なるだろう。
ベルトルッチが描きたかったのは「政治体制とは何たるか」だとしか思えない。同じく、ベルトルッチの超大作「1900年」においても同様だ。
「帝国主義」も「共産主義」も更にどのような「政治体制」も本質は変わらない。振り回されるのは市井の民にしか過ぎない、それをベルトルッチは「愛新覚羅溥儀」という狂言回しを用いて描いている。
しかし、この作品がこれだけ美しく幻惑的で魅力に満ちているのは、ベルトルッチがどれほどまでに溥儀を愛しているか、それに尽きる。
そのため、坂本龍一の音楽は極限までにエモーショナルで、ヴィットリオ・ストラーロの撮影はこの上もなく美麗で陶酔を促す。
溥儀を演じるジョン・ローンは「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」に優るとも劣らぬ貴品を漂わせ美しい風貌は男女を問わず魅了する。
物語は回想形式も織り交ぜながら、ドラマティックに悠然に流れる。
傑作とは、ときに偶然に生まれる。
しかし、この作品には坂本龍一を始め、題材においても傑作の誕生を予感させる要素が余りにも存在し過ぎている。
この作品は、誰がなんと言おうと傑作に他ならない。
「この拙作レビューを畏れ多くも 坂本龍一氏 に捧げる」
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