羅生門のレビュー・感想・評価
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文句なし!
今でこそ“羅生門スタイル”として映画の一スタイルになっているが、この当時はかなり実験的な内容も盛り込んだ黒澤明の出世作。最初は橋本忍が3日で書きあげたという「藪の中」だけであったが、短いということで黒澤明の協力により「羅生門」をくっつけたという。 多襄丸(三船)が下手人であることは間違いなく、貴族の妻(京マチ子)が彼に手ごめにされたことも間違いない。人間のエゴと嘘。人間には嘘で固めたほうが楽になるという言葉どおり、殺すことや不貞が本人によって都合のいいように思いこむ。まともな人間なんていない・・・人間不信になってしまう荒んだ世の中はいつの時代にも通ずることかもしれない。 多襄丸の証言:男の目の前で妻を手ごめ。後に決闘で男を殺した。 妻の証言:短刀で夫を殺した。 本人の証言:いつの間にか短刀が刺さっていた。 杣売の証言:あくまでも短刀ではなかった。 それに加えて、「殺してくれ」と言ったかどうか、妻の不貞にどう対処したものか・・・などと、各自の尊厳を保つような嘘で固められるのだ。最後には杣売も短刀を盗んだことが暴かれてしまい、坊主までが人間不信に陥りそうになるというラストシークエンス。しかし、最後には温かいエピソードとなるところで極上の作品に仕上がっているのでしょう。 脚本もさることながら、宮川一夫の撮影技術が凄い。タブーとされる太陽を木漏れ日として直接撮った初めての映画らしいし、雨に墨汁を混ぜた重々しい映像や風そのものを感じさせる葉の影など、細かなこだわりが凄い。 音楽ではボレロ風の曲が使われていたけど、羅生門スタイルの映画『閉ざされた森』なんてのはモロにボレロだったなぁ・・・やっぱりオマージュだったのか。今の感覚で点をつけたら4点なんだろうけど、スタイルを確立させた功績を称え5点。
今見ても全く色褪せない
旅法師と柚売りが通りすがりの下人に語り始める――盗賊が森で女を犯し、その夫を殺した。しかし語られる各々の証言は異なっている、というストーリー。 白黒映画だが役者の力強さを感じ、ストーリーも人間的に普遍のテーマを扱っているだけに今見て古臭さを感じさせない。「人間は見栄のために自分にさえも嘘をつく」というエゴを描きつつ、最後は希望を感じさせる点がいい。 むしろ白黒だとすべての場面に味を感じて風情を勝手に感じてしまう。 ただ、仕方ないことではあるが何を言ってるか聞き取れない場面がよくある。特に武士の台詞は加工されていて日本語字幕は必須。
最後の証言が真相だとは思えない
だって自分は事件を知らないと当時の法廷で証言してるんだからね。大嘘つきなのは自分で堂々と述べている。結局真実は「藪の中」。 結構面白く見れたのは、やはり映画の作りが上手いからだと思う。カメラワークなんかは第三の男を思わせるようなところがある。単純な内容だが想像力を掻き立てられるところがある。みんながみんな自分を美化しているところが面白い。
【”羅生門に棲む鬼は人間の恐ろしさを見て逃げ出した・・”エロティック&バイオレンス&人間の悪性、善性を全て盛り込んだ傑作。】
ー 京マチ子演じる、野武士(世界の三船敏郎)に手籠めにされた武家の妻真砂のファム・ファタールの姿に、戦慄した作品。ー ◆感想 ・内容は、これだけの名作であるので、人口に膾炙している前提で割愛 ・野武士(三船敏郎)に手籠めにされた京マチ子演じる、金沢真砂の自らを助けられなかった、武士の夫金沢武弘に対する掌返しの姿が、凄まじい。 涙を流しながらも、夫を見捨て、野武士に”一緒に連れて行ってくれ”と、懇願する姿。 野武士が、躊躇う程の真砂の姿を、人間の悪性と観るか、本性と観るかはどうかは、観る側次第である。 ◆真砂役を、原節子自身が演じる事を熱望し、黒沢明監督も望んでいた事は、多くの人が知る事である。 ー石井妙子著作の「原節子の真実」を一読されたい。ー だが、映画製作会社の思惑により、それは叶う事はなかった。原節子の清楚なイメージに合わなかったからである。 それ故に、今作の京マチ子の演技は、鬼気迫るモノである。 三船敏郎も、森雅之も、飲み込んでしまっている。 <近代邦画が世界に対し、 ”大和撫子は、このように激しい感情を持っていたのか、正に京マチ子演じる金沢真砂は自覚無き、恐ろしきファム・ファタールではないか。” と世界を震撼させた一作。 今作以降、黒沢明と、小津安二郎は全く違う世界観も持った作品を世に出していく。 全てを知る、志村喬演じる羅生門の下で雨宿りする男が、盲目の僧(千秋実)から幼子を引き取る姿に、人間の善性を凝縮させており、今作の幅、奥深さを醸し出している作品でもある。>
時間配分が
カメラワークはさすが黒澤監督。さながら見本市。 ストーリーはなかなかぶっ飛んでますね。 好きです。(そうとしか言いようが。) しかし一つ一つのシーンの時間配分が…。 無音映画を意識したそうなんですが、短い作品なのに、早く終わってほしくなってました。
人の闇の部分・疑心暗鬼を描く作品
黒澤明監督の名前は映画好きでなくても大抵の人は知っていますし、この「羅生門」は彼の作品の中でも特に「名作」と名高い作品ですので以前から知っていました。しかし鑑賞するのは今回が初めてです。小説の「羅生門」は学生時代の国語の教科書に載っていたので知っていますが、「藪の中」は未読のため、内容に関する前知識はほとんどない状態での鑑賞です。 結論。面白い!!!! 70年前の映画とは思えないほどに面白い!!!もちろん映像の古さはありますが、内容に関しては全く古いと感じさせないような、現代人にも通じるようなテーマを含んだ作品でした。映像の見せ方や構成も見事です。 ・・・・・・・ 急な雨に打たれ、雨宿りのために羅生門の下にたどり着いた下人。そこには先客の旅法師と杣売りが雨宿りしていた。「わからねえ、さっぱりわからねえ」としきりに呟く杣売りに下人は「何がわからねえんだ」と質問する。そして杣売りから、とある殺人事件についての話を聞かされる。それは、事件関係者の証言が全員食い違っている奇妙な事件の話であった。 ・・・・・・・・ 杣売りは死体の第一発見者、旅法師は生前の被害者を最後に見た人物として検非違使(現代でいうところの裁判所)に呼ばれ、関係者全員の証言を聞いたのだが、全員の証言が大きく食い違っており、何が真実なのか分からない。そして最後にとある人物の証言を聞くことで、事件の真相が明らかになるという構成になっています。武士や下人が登場するので時代劇のような作品を想像していましたが全くそんなことはなく、内容は非常に上質なミステリ映画でした。 とある一つの殺人事件に関して、その事件の関係者が事件の概要を説明する。 関係者の証言を聞いていくうちに想像していた事件の概要が180°変わってしまう「白ゆき姫殺人事件」とか、調べれば調べるほど事件の真相に近づいているように思うけど全然そんなことなかった「サーチ」という映画ありましたけど、なんとなくその手の映画に近い気がしました。いや、ちょっと違うかな。とにかく、現代の映画にも通ずる全く古臭さを感じさせない表現を用いた、素晴らしい作品です。 黒澤監督の名を世界に知らしめた作品としてあまりに有名であり、海外にもファンが多い(らしい)この「羅生門」ですが、時代を超えて楽しまれる作品だと実感させられました。めちゃくちゃ面白いです。 公開された時代も良かったのかもしれませんね。1950年といえば、第二次大戦の傷もまだ癒えていないころでしょう。その時代背景と映画内の荒廃した都の情景が絶妙にマッチしていただろうと、容易に推測できます。 検非違使から見たようなカメラアングルで各証言者の語る姿を見せられるのは、「観客のあなたが事件の真相を導くんだ」と言われているような演出です。本当に良かった。 また、「人は信用できない」「疑心暗鬼」を描くようにストーリーが進みますが、最後に「人間も捨てたもんじゃない」という一筋の希望を残して映画が終了するのも非常に良かったですね。 古い映画だからという偏見を持たず、多くの人に鑑賞してほしい素晴らしい映画でした。 オススメです!!
人間のもつ深み
人間の愚かさと奥深さを描いた芥川龍之介の「藪の中」、「羅生門」を、映画という形で再構築した大傑作。人間の持つエゴイズムを哀しいほどにまで炙り出し、見事な映像表現と迫真の演技で観る者を圧倒させています。 冒頭から映し出された降りしきる大量の雨、多襄丸と侍の藪の中での立ち回り、演者を照らす絶妙な光と影、、、 これらの圧倒的な映像美だけでも見惚れてしまうのに、食い違う証言を巧みに物語の中で構成させることによって、人間のエゴイズムを問いかける手腕は素晴らしいとしか言いようがありません。 黒澤監督は、芥川が文学で炙り出した人間の本質を、映像という形で新たに再構築し、より芸術性を高めていると思います… 人間の欲望や意思、その奥に秘められている人間の本質は、演者の目つき、表情、声、顔を浸る汗、照らす光の具合や、まわりの音などによって、無限の奥深さを与えてくれます。京マチ子演じる女は、恐ろしい程の数の顔を持ち、何を想い、何を感じ、何を望んでいたのか、答えのない幾つもの人間性を曝け出しています。視覚的、聴覚的な感受性、これこそ映画のもつ究極的な面白さで、物語を感じ取り、解釈する仕方を無限に広げてくれるのです。 最後に、この映画は人間のエゴイズムを炙り出しているとは言ったものの、本当にそれだけでしょうか。証言がそれぞれ異なるのは、何も自分を正当化するエゴイズムだけでなく、もしかしたら皆何か別の想いがあって、誰かを庇う部分があったのではないか、、、そんな複雑な心境が証言に含まれているのではないかと思いました。エゴだけでなくて、こんな可能性もあるかもしれないから、より物語が複雑になって深みを増しているのだと思います…
ヴェネチア獲ってるし誉められ尽くしているからとやかく言うものでもな...
ヴェネチア獲ってるし誉められ尽くしているからとやかく言うものでもないが、やはり別格。頭から黒澤明を見直してる最中だけど、カメラマンでここまで質が高まるものなのかと驚いた。演出を聞いてそれ以上の事をしてくれるスタッフの何とありがたいことか。全ての要素が噛み合っている。完璧。
白黒映画で昔の映画で、そこまで編集や演出に手がこんでる訳ではないの...
白黒映画で昔の映画で、そこまで編集や演出に手がこんでる訳ではないのにすごかった。昔の映画の名作は今の映画と比べものにならない面白さがあると感じた。
ようやく、観た。
ようやく、「羅生門」を観た。地上波TVですが。NHK、ありがとう! 世界の黒沢監督が、1950年にベルリンを獲った作品なんだと、クレジットで知った。 俺が生まれる10年前の作品とあって、音はさすがに厳しい面があるけれど、画像はリマスターによってかなり観られる感じにはなっているよね。 原作の「藪の中」と「羅生門」を組み合わせて、現代ではもはや想像すらできない過酷な環境の中で、嘘ばかりつきながら、それでもなお人間らしさを残して生きている "ヒト" に対する、高らかな人間賛歌になっているんだね。 自分は、原作の一方になっている、芥川龍之介「藪の中」がとても好き。夏目漱石の「夢十夜」と並んで。本を読まなかった高校時代に唯一読んでいた小説。 前半にあたる「藪の中」部分。 何が本当かわからない、3人それぞれの言い分。この映画では、原作の真相を、女に翻弄された男たちとした。加えて、事実を、各自の心の中で、自分に都合のよい話に置き換えて、それぞれ全く別の話と信じ込んでしまう、弱い心の人間たち。そういう解釈にしたのだな・・・と納得はした。 後半の「羅生門」部分も、原作の突き放すような結末ではなく、人間愛を感じさせる結末にした。だからこそ、本作の人間賛歌が成り立っているということもよくわかる。人間に対してあれだけ絶望させておいて、最後の最後は、それでも人間を信じたくなるという余韻を残すところが名作なんだなあ、と思った。 ただ個人的な感想は、甚だ不遜な言い方だが「惜しかったなあ」だ。この映画の本質をなす部分のために、上記したように原作を解釈したわけだが、その結果、原作のひとつ「藪の中」がもつ "摩訶不思議な感じ" がぐっと小さくなった点が惜しかった。 自分は、この原作の不可思議感が極めて好きだったんだなあ、と感じている次第です。原作はごく短い小説なので、気が向いたら読んでみてください。 また、映画館が開いたら、是非どこかで上映してくれないかな。
役者の演技が素晴らしい。あの目配りは最高です。
短い時間でコンパクトによくまとめられています。 贅肉を削ぎ落とした人間の性を見事に表現できていますし、映像も美しい。 森雅之、京マチ子、三船敏郎のあの目配りは凄いですね。
素晴らしい!
コレが70年前の作品である事に感動 脚本、演出も素晴らしいと思いますが、ここはやっぱカメラワーク 光と影のコントラスト アングル これは凄腕 人間は心の闇を誰でも持っていると思う 良い時より悪い時の方が人の本音や醜さ等が見てとれる 今現在、新型コロナウィルスのせいでマスク不足 スーパーのマスク販売に エサを与えられた鯉のように群がり 押し合い圧し合いをして あれっ?さっきまで中国人は常識ね〜よな~ って言ってたクセに たいして変わらないじゃん皆んな(笑) 結局、人は自分さえ良ければイイのだ がしかし どこまで理性を 保つことが出来るかは 人それぞれ その瞬間に希望や情を 感じ取れる者 そこに芯の強さの差があると思う そしていつの時代も 涙は女の武器である
答えは藪の中
次々と語られる、食い違う供述。 一体誰が本当のコトを言っているのか… って、最後の話が真相なんじゃないのかな? 昔見た時は、何だかよくわからない印象だったけど、今回字幕をONにして見たら、だいぶわかり易かった。 使ってる言葉が難しいんじゃ。 それにしても、三船敏郎の男らしいこと… 今の俳優に、こんな男はいるかなぁ~?
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