「自分の弱さに開き直るか向き合うか」羅生門 komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
自分の弱さに開き直るか向き合うか
クリックして本文を読む
白黒のコントラストの強い画面。舞台設定も白の強い回想シーンと、暗い雨の羅生門とで対照的。そんな中で、汗の一粒一粒まで3Dの様な立体感を感じさせる三船敏郎の肉体の存在感が際立つ。汗にまみれても不思議と湿度は感じず、逆に乾いて見える。
印象的なのは森雅之と京マチ子。不自由のない幸せそうな夫婦からの変わり様は本当に恐ろしい。人の本性が露わになった形相、特にじっとりと見詰める森雅之の白目がちな目が頭からなかなか離れてくれない。
最後、志村喬演じる男が 僧から赤子を受け取ろうとする時の表情が何とも言えない。短刀を盗み、それを知らぬと嘘をついてしまった事を明らかにされながら、それでも苦しい生活の中で赤子を引き取って育てようと決意する男の善性がよくにじみ出ている。そして晴れ上がった空の下、羅生門を後にする男の姿は神々しくすらある。
一方で、赤子から衣を剥ぎ取り開き直った男は、きっと今も雨に打たれながら歩き続けているように思えてならない。
…
鑑賞後、羅生門と藪の中を久しぶりに読み返した。そして、小説の羅生門に出てくる老婆は映画で赤子の衣を剥いだ男であり、老婆を蹴落とす下人が志村喬の演じた男になったんだと気付き、映画のタイトルに合点がいった。
コメントする