劇場公開日 2008年11月29日

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「人の闇の部分・疑心暗鬼を描く作品」羅生門 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人の闇の部分・疑心暗鬼を描く作品

2020年12月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

黒澤明監督の名前は映画好きでなくても大抵の人は知っていますし、この「羅生門」は彼の作品の中でも特に「名作」と名高い作品ですので以前から知っていました。しかし鑑賞するのは今回が初めてです。小説の「羅生門」は学生時代の国語の教科書に載っていたので知っていますが、「藪の中」は未読のため、内容に関する前知識はほとんどない状態での鑑賞です。

結論。面白い!!!!
70年前の映画とは思えないほどに面白い!!!もちろん映像の古さはありますが、内容に関しては全く古いと感じさせないような、現代人にも通じるようなテーマを含んだ作品でした。映像の見せ方や構成も見事です。

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急な雨に打たれ、雨宿りのために羅生門の下にたどり着いた下人。そこには先客の旅法師と杣売りが雨宿りしていた。「わからねえ、さっぱりわからねえ」としきりに呟く杣売りに下人は「何がわからねえんだ」と質問する。そして杣売りから、とある殺人事件についての話を聞かされる。それは、事件関係者の証言が全員食い違っている奇妙な事件の話であった。
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杣売りは死体の第一発見者、旅法師は生前の被害者を最後に見た人物として検非違使(現代でいうところの裁判所)に呼ばれ、関係者全員の証言を聞いたのだが、全員の証言が大きく食い違っており、何が真実なのか分からない。そして最後にとある人物の証言を聞くことで、事件の真相が明らかになるという構成になっています。武士や下人が登場するので時代劇のような作品を想像していましたが全くそんなことはなく、内容は非常に上質なミステリ映画でした。

とある一つの殺人事件に関して、その事件の関係者が事件の概要を説明する。
関係者の証言を聞いていくうちに想像していた事件の概要が180°変わってしまう「白ゆき姫殺人事件」とか、調べれば調べるほど事件の真相に近づいているように思うけど全然そんなことなかった「サーチ」という映画ありましたけど、なんとなくその手の映画に近い気がしました。いや、ちょっと違うかな。とにかく、現代の映画にも通ずる全く古臭さを感じさせない表現を用いた、素晴らしい作品です。

黒澤監督の名を世界に知らしめた作品としてあまりに有名であり、海外にもファンが多い(らしい)この「羅生門」ですが、時代を超えて楽しまれる作品だと実感させられました。めちゃくちゃ面白いです。

公開された時代も良かったのかもしれませんね。1950年といえば、第二次大戦の傷もまだ癒えていないころでしょう。その時代背景と映画内の荒廃した都の情景が絶妙にマッチしていただろうと、容易に推測できます。

検非違使から見たようなカメラアングルで各証言者の語る姿を見せられるのは、「観客のあなたが事件の真相を導くんだ」と言われているような演出です。本当に良かった。

また、「人は信用できない」「疑心暗鬼」を描くようにストーリーが進みますが、最後に「人間も捨てたもんじゃない」という一筋の希望を残して映画が終了するのも非常に良かったですね。

古い映画だからという偏見を持たず、多くの人に鑑賞してほしい素晴らしい映画でした。
オススメです!!

といぼ:レビューが長い人