羅生門

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劇場公開日:

羅生門

解説・あらすじ

世界にクロサワの名を知らしめた歴史的作品。原作は芥川龍之介の短編「藪の中」。平安時代、都にほど近い山中で貴族女性が山賊に襲われ、供回りの侍が殺された。やがて盗賊は捕われ裁判となるが、山賊と貴族女性の言い分は真っ向から対立する。検非違使は巫女の口寄せによって侍の霊を呼び出し証言を得ようとする、それもまた二人の言い分とは異なっていた……。豪雨に浮き立つ羅生門の造形美、立ち回りシーンの迫力、生き生きとした役者たちの演技などすべてが印象深い作品。ベネチア国際映画祭でグランプリを受賞した、黒澤明の出世作である。米アカデミー協会の全面的バックアップを受け、映像とサウンドを修復した「デジタル完全版」が2008年に公開された。

1950年製作/88分/日本
配給:角川映画
劇場公開日:2008年11月29日

その他の公開日:1950年8月26日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第25回 アカデミー賞(1953年)

ノミネート

美術賞(白黒)  
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映画評論

映画レビュー

4.0語りの騙り

2024年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

黒澤明監督作品。傑作です。

本作では、登場人物の虚栄心によって、殺人の事実が歪曲され、それが映画的手法によって同じ強度で映像化されているのが面白い。またそのことを通して人間の愚かさが描かれており、娯楽性のみならず人間性とは何かを深く問いているのである。

また羅生門のセット、光と影のコントラスト、雨と汗の演出も素晴らしい。この素晴らしさについては、多くの研究の蓄積があると思うので、今後も探求をしていきたい。

人間とは、殺害されて幽霊になっても、自らの見栄のために事実を歪曲してしまう愚かな生き物である。しかし黒澤明監督が映画に翻案するにあたって、追加したラストのシーンでは、人間性の可能性が描かれている。自らの愚かさに光をあて、子どもを抱きかかえること。そして雨上がりの門をくぐること。監督が信じた人間性を私も信じてみようと思う。

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まぬままおま

4.0いろんな点で想像していたのと違ってた

2021年3月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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momokichi

4.0世界に知らしめた光と影の映像美、鬼気迫る名演

2020年6月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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和田隆

5.0なぜ人は事実を歪めるのか?

2025年5月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

黒澤明の代表作にして、戦後日本映画を世界に知らしめた金字塔。『羅生門』は、ある殺人事件の真相をめぐって、関係者それぞれの証言が食い違うという構成で描かれていく。

登場人物は皆、自分の語る「真実」の中で、自分に都合のよい姿を演じている。多襄丸の誇張された武勇、女の誇りと絶望、夫の自殺という逃避。それぞれの証言は、自分自身への欺瞞に満ちている。さらに極めつけは、傍観者であるはずの木こり(志村喬)までもが、自分を正当化するために嘘をついていたという事実。映画を見ているだけのはずの観客自身にも「本当に自分を偽らずに生きているか?」という問いを突きつける。

宮川一夫によるカメラワーク(とくにヤブの中を走る映像や、木漏れ日を用いた光と影の表現)は、人間の“虚”と“実”を見事に視覚化している。過剰になりかねない音楽演出も含め、撮り方・演技・音響が見事なまでに調和しており、「見せる黒澤」「語る黒澤」の両面が最大限に発揮された作品となっている。

三船敏郎は表情と肉体だけで荒々しい多襄丸の情念を描ききり、京マチ子はあどけなさ、色気、気の強さという女性の複雑さを見事に体現している。

そして最後、羅生門の廃墟に赤ん坊を置き去りにしようとする木こりが、良心を取り戻すようにして子どもを抱き上げる。嵐に閉じ込められ、荒廃した羅生門。雨はやみ、雲の切れ間から、わずかに希望の光が差し込む。

登場人物全員の気持ちを見ている観客全員が理解できてしまうというのが本作の怖さであり偉大さだと思います。

NHK BS4Kで鑑賞 (2008年に修復されたデジタル完全版)
95点

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neonrg