用心棒のレビュー・感想・評価
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歩く後ろ姿だけで惚れてしまう
これが黒澤明作品の初鑑賞。重々しい作品かと思っていたが、全くそんなことはなかった。ストーリーに強引な部分はあるけれど、余計な力が抜けつつも見応えのある素晴しい娯楽映画だった。
先ず、何と言っても三船敏郎が格好良い。オープニング、彼の歩く姿に惚れ惚れし、棒切を投げ上げまた歩き出すところですっかり魅了されてしまった。
彼以外の他の登場人物達もみんな面構えからして様になっている。東野英治郎と西村晃を黄門様と刷り込まれている自分としては、飯屋のおやじと小悪党を上手く演じる二人を見ると何とも不思議な気分になる。
そして何と言っても最後の決闘シーンが良い。遠く宿場の端に姿を表す三船敏郎。歩みに合わせるように音が乗り、両者の距離が近づくとともに緊張感が高まる。その頂点で仲代達矢が一言発した途端、あっと言う間に皆を斬り伏せる。そして締めの「あばよ」、これはしびれる。
普段は映画を見直すことをしないのだが、今回は珍しく当日翌日と2回見直してしまった。
(録画にて鑑賞)
…
この作品が荒野の用心棒の元になった事は聞いていたが、この作品自体にも色々な作品の気配を感じた。舞台となる宿場町は西部劇に出てきそうだし、名主の家を覗くシーンは裏窓を思わせる。更に、若い家族を助ける主人公からはカサブランカ的なハードボイルドが漂う。
様々な映画作品が影響し合って時代を作っていたんだなと感じるとともに、制作者の貪欲さが垣間見ることができた気がして面白かった。
ボコボコの三船敏郎…
が見れるとは思わなかった。二組のやくざの対立により、廃れる一方の宿場町。二組の潰し合いを目論み、用心棒としてどちらの組を味方するわけではなく、行ったり来たり。若干、これが長い気がして、焦れに焦れたが、ラストの砂嵐の決闘シーンは格好良く、スカッとした。あばよ!
豪胆知略と流麗剣戟!
DVDで3回目の鑑賞。
やくざの勢力争いで荒れ果ててしまった小さな宿場町に現れた、浪人・桑畑三十郎(三船敏郎)。すっかり活気を無くし、儲かるのは桶屋だけ(死人がたくさん出て、その分棺桶が売れるから)と云う悲惨な有り様を見かねて一肌脱ぐことに。
双方を手玉に取って共倒れさせようと画策。知略を巡らし、凄まじい剣戟で相手をバッタバッタと斬り倒していく三十郎の活躍を描いた痛快エンターテインメント時代劇。
空っ風が枯れ葉を巻き上げ、賑やかさが絶えた宿場町を吹き抜けていく…。西部劇みたいな世界観だなと思いました。ピストルを持ったヤツ(卯之助―演・仲代達矢)までいるし…
ストーリーもさることながら、三十郎をはじめとした登場人物のキャラクター造形が素晴らしい限り。とてもイキイキしていて、それぞれが魅力を放っているように思えました。
三十郎の豪胆な知略と流麗な剣戟に惹きつけられる。事態は彼の思惑通りに推移し、1秒にひとりの割合で相手を斬り倒す姿に惚れ惚れ。素早く繰り出される太刀捌きが圧巻でした。
[余談]
クリント・イーストウッド主演「荒野の用心棒」は本作を無断でパクって製作されたと云うことを知って驚愕しました。言われてみればそっくり、と云うかそのまんま(笑)。
他にも「ラストマン・スタンディング」(これは正式なリメイク)だったり、本作を彷彿とさせる作品は数知れず…。やっぱり「世界のクロサワ」はすごいなぁ…
※修正(2023/06/02)
太く短く 棒切れに任せた はい吐露吐露 雨戸での切り替え 酒を飲み...
太く短く
棒切れに任せた
はい吐露吐露
雨戸での切り替え
酒を飲みながらよく考える
震える手、おちょこに注ぐ
高台から右左前遠ざか
仲直りがさらに大きな喧嘩を生む
雨戸閉まる 口元
弱点 ひ弱な身分で哀れに振る舞う者とその徳が仇となり禍を呼ぶ
ここは地獄の一丁目だあ
吹く木の葉と包丁
吊るされる権爺の唸り声を手前にフォーカス
百姓の伏線というか
卵は白くて黄色い 銃と冥土と企と信頼と先明
銃声と団扇太鼓(91秒約1分半) お題目と復讐
映画の教科書、何度観ても面白い。
黒澤明の映像表現は、多くの映画人が手本とするところ。
この作品で一番の名シーンは、三船敏郎演じる素浪人が宿場に到着したその途端、手首をくわえた犬が歩いてくる場面かもしれない。
この宿場がただならぬ状況だこいうことを一目でわからせる名アイディアだ。
黒澤明は、監督デビュー作の「姿三四郎」で、三四郎が矢野正五郎に出会うイントロから本筋に移る時間の飛躍を、川の端の杭に引っ掛かった下駄に四季の移ろいを反映させることで見事に表現していた。
犬のシーンだが、祖師ヶ谷大蔵でスカウトした素人犬だったらしく、
カメラの後ろから飼い主が呼び寄せるのだが、犬の動きが予測できない。
シネマスコープは二つのレンズでピントを合わせなければならないが、
予測不能の犬の動きに見事にピントを合わせきったのは、
当時撮影助手だった木村大作だと、
野上照代さんのインタビュー記事で知った。
三船が縁の下を這って逃げるシーンでは、
吊り下げたカメラを脚立の上からテープと紐を使って操作し、
180度パンでもピントを合わせている。
これは、本番ではレンズを覗けず、リハーサルで距離を把握して感覚で合わせたそうだ。
木村大作は、黒澤明から日本一のピントマンと評されたらしい。
冒頭、浪人三船が目的もなく気の向くままに歩いていることが台詞なしで説明されている。
そして、目の前に現れた百姓親子の言い争いで、近くの宿場で何かが起きていることを暗示する。
この場面、三船を中央奥に配し、手前で百姓親子の争いを見せ、
争い事の様子とそれを観察する三船の様子を同時に捉える映画的手法に、
親子が上座から現れ息子は下座に父親は上座に捌けていく演劇的手法が重なっている。
同様の構図が、
宿場で対立する両陣営をけしかけて、
自分はヤグラに登って文字通り高みの見物を決め込む場面でも見られる。
ここでは、中央奥の三船が高い位置なのでカメラは仰角に据えられ、
右から清兵衛一家、左から丑寅一家が、
剣先が届くか届かないかの距離で押して引いてをする。
同じような構図だが、こちらは奥行が深くよりドラマチックだ。
三船敏郎と仲代達矢のキャラクター対決が、また良い。
二人ともバタ臭い顔立ちの二枚目だが、
仲代の方が鋭い眼光で危険な雰囲気を醸し出していて、
三船は「七人の侍」から比べると随分落ち着いた貫禄を感じさせる。
クライマックスの対決は、やや冗長な気がするが、仲代への敬意の現れだろう。
そして、冒頭で親と揉めていた百姓の息子が登場。
ここで、とっとと家に帰れと促すとは、粋な構成だ。
台詞すらないが、司葉子が美しい!
よかった
何度も見ている割に忘れているので新鮮な気持ちで楽しかった。三船のキャラがかっこいい。ひょうひょうとしていて豪胆で拷問されてもへこたれない。惨めったらしい男を嫌っているのに優しい。ほんの数回あるだけの殺陣がめちゃくちゃ素早くて一瞬だった。
女郎や浪人たちが本当に汚らしくてリアルな感じがした。
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