「虚無主義に染められた時代活劇」用心棒 h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
虚無主義に染められた時代活劇
61年公開。
ヤクザたちの抗争と暴力で荒廃した宿場町。
名もなき浪人が対立するヤクザの間でうまく立ち回り、悪党どもを一網打尽にしていく痛快時代劇。
完璧主義の黒澤監督らしく、舞台セットや衣装、セリフ回し、殺陣の徹底したリアリティがみてとれる。
あらためてリメイクの「荒野の用心棒」と比較してみると面白い。
ストーリーや展開はほぼ本作を踏襲しているが、やはり「元祖」の本作には遠く及ばず。
「荒野ー」では町が無機的でハリボテのような印象を受けたが、本作は恐怖のなかで息を潜める住民の存在や、娼婦たちや下っ端のヤクザの生活感まで感じられる。
EastwoodのJoeもカッコいいが、三船敏郎の三十郎はイタズラ好きの子供のようで愛嬌のあるキャラクターだ。
悪が蔓延するニヒリズムの世界観も、本作のほうがより強く感じられ、遠い昔の話のように思えないのが不思議だ。
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