劇場公開日 1948年

「黒澤明はなぜサングラスをしているのか?」醉いどれ天使 KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0黒澤明はなぜサングラスをしているのか?

2019年9月21日
PCから投稿

脚本家目線で言うと、ちょっとおかしい部分があるので指摘してみたい。
このストーリーは酔いどれ天使が主役であるので三船敏郎が親分と始末つけに行くっていう部分はむしろあってはいけないと思う。このシーンがあるから誰が主役になるか分かんなくなってしまった。酔いどれ天使は悪ぶっていても実はいい奴で、どっかで頭下げて三船のために恥かいて頑張っているところをクライマックスにすべきだったと思う。そして苦労して治療のための何かを手に入れて帰ってきたら三船が焼け起こして死んでいたと・・・というかっこにすれば主役が散らばらずに良かったと思う。
この映画の後、「野良犬」で黒澤明は三船敏郎を使ったアクション映画監督へと生まれ変わって行くのであるが、この映画の頃はまだ、それまでの人情もの監督の部分を強く引きずっている。それセンチな人情もの的情緒とアクション要素とが上手く融合せず中途半端になってしまったように感じた。
この映画のラストショットではカメラが酔いどれ天使を見送った後、何と後ろへ下がって行く。普通カメラはそこに固定して主人公が遠くの方へ去っていくところを見送る者であるが、カメラが後ろへ下がっていくとはどういうことだろう?私にはそれが黒澤明の人情もの映画への決別を示しているように感じた。
「私はこの三船敏郎という素晴らしい俳優を手に入れた。これからはアクションもの監督に生まれ変わるのだ。人情もの監督黒澤明よさようなら・・・」
と。

タンバラライ