「正体の掴めないかっこいい監督」許されざる者(1992) 悠さんの映画レビュー(感想・評価)
正体の掴めないかっこいい監督
優れた仕事だった。彼の映画の秘密に一つ気づいた。カットのその瞬間に余韻がある。
イーストウッド演じるウィルが殺しに出かけるとき、子供たちの方を振り返る。
上のシーンを撮るとしたら悪い監督はウィルに子供を観る時間を4秒与えて目薬で涙を流させる。
並の監督はそれが過剰だと理解しているから1秒で踵を返させる。
イーストウッドは子供を見つめる時間"全て"に意図を与えた。
子供を眺める、子供を見つめる、死んだ彼らの母親の面影を見つめる、彼らを心配する、etc.....
それらを可能にしているのはそれまでの実直で確かな演出によるものだろう。それを全て詳らかに説明するにはあと最低でも9回は観ないといけないだろうが、そういうカットをしている。
証拠に全てのショットの時間を数えてみると、シークエンスの後半になればなるほどショットの長さが長くなっていることがわかるだろう。
正直、疲れていて10分ほど眠ってしまった。このレビューが正確なのにも自信はないし、この演出が彼固有のものかといえばおそらく違うだろう。少なくともドン・シーゲルの有名な「弾の数を数えていない」シーンはこの手法の一際素晴らしい例に当てはまるだろう。
体力のあるときに必ずまた観たくなる傑作だった。
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