「酒乱」許されざる者(1992) Kjさんの映画レビュー(感想・評価)
酒乱
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「アッ、こいつ呑んでしまってる!」重要な瞬間なのにさりげない、自然と瓶に手が伸びる。イーストウッドらしい演出。
酒場に戻ってきた時のたたずまいの凄み、他を圧する。最初に店の主人を無造作にヤルのもいい。プライオリティに意味がある。人を殺めることの精神的負担について、滑稽なまでの銃撃シーンを見せておきながら、ここでは躊躇いがない。人の心を失ったのだろう。いやはや、酒の力は恐ろしい。
様々な変化球がさりげなく投げ込まれてくる。先の銃撃シーンもそうだ。「パスっ」といって最後にヒットする。仕留めた感がうっすら表情に滲む。「エッ?効いてるの?」と聞いてしまう。本人はまだ動いているし。しかし、じわじわと弱る。「ああ、効いたんだ」と気付かされる。
ジーンハックマンの牢屋での緊張感も良い。非情な覚悟で秩序を護る者。漢の中の漢。しかし、本人が少しドヤ顔しているのは、イケテナイ。下手くそ大工のことに触れられると、マジ切れされる。そのイケテナイ感の方が最後まで延伸される。
ダーティーハリーのおっさんが監督業に手を出して成功したというのが当時の印象。今や巨匠。同じような転身の成功事例の先駆けにもなった。イーストウッドらしさ溢れる名作である。
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