夢のレビュー・感想・評価
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小説家の短編集みたい
総合60点 ( ストーリー:60点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:75点|音楽:65点 )
社会や人間への風刺や批判などが盛り込まれているものもあるが、監督の思うところをそのまま映像化したようなものもあり、全体的に抽象的な内容で分り辛い。有名小説家の短編集にこのようなものがありそうだし、実際に夏目漱石の「夢十夜」から作品の基本は来ているのだろう。映画というよりもそんな文学的な作品。外的な動きよりも心の内面を表現しようとする。
一番気に入ったのは、隋道から兵士が登場する一遍。部下が全員死んだのにたった一人だけ生き残った隊長の立場を考えると居た堪れない。自分が死んだことを認め難く現世を彷徨う兵士たちも哀れだが、重い重い枷をはめられて今後を孤独に生きていく隊長も辛い。野口一等兵が「あれが自分の家で・・両親が待っている」と言っていたので、多分隊長は部下の死に際を彼の両親に報告するためにわざわざ部下の家を訪ねて来たのかもしれないが、その仕事も辛い。もし自分がこの立場だったらと考えてしまう。
ゴッホの一遍では、みんなフランス語を喋っているのにゴッホがいきなり英語を喋るのに違和感。配役をみるとなんとマーティン・スコセッシだった。彼が出ているのは最初に観たときには気が付かなかったが、こんな人が登場しているとは思わなかった。
年齢を経ると見え方は変わるのかも
最初にタイトルを「見方」と付けましたが、最後に「見え方」と変えました。
第1話「日照り雨」
第2話「桃畑」
第3話「雪あらし」
第4話「トンネル」
第5話「鴉」
第6話「赤富士」
第7話「鬼哭」
第8話「水車のある村」
のオムニバスのような作品構成になっています。
全編を通しては初期の黒澤作品のようなエンターテインメント性や物語的な構成になっておらず、退屈に感じたり、何でこんな表現を見せるんだろうかと苛つきにも似た印象を感じることも多かったです。
ただ、最後の「水車のある村」を見ている間に、この作品全編をまたいつか見てみたいと思う気持ちが湧いてきました。
きっと「見え方」が変わっているだろうと期待に似た印象が残りました。
夢まで常人離れ
「えーなんだよ夢を映画化って」と低いテンションで観たら、そこは流石の黒澤明。夢まで常人離れしている。単純に見ていて面白い上に、彼のメッセージがビンビン伝わってくる。円谷プロによる特撮も素晴らしい。特に好きなのは、放射能・水爆の恐怖を変化球で描いた『生きものの記録』と違い、ド直球でそれを訴える「赤富士」と「鬼哭」。前者のラストシーンは本当にぞっとするし、後者の巨大化したタンポポの下で鬼と人間が語らうという画のインパクトは圧倒的。少しキャラクターに監督の主張を言わせすぎな気もするけど、そこは画面の強さとオムニバス形式ということで目を瞑れる範囲。「鴉」と「トンネル」も素晴らしい。
子供の頃にみた衝撃は今も忘れない。
子供の頃に、地上波で流れていたのをたまたま見たのが最初です。
当時小学生だった僕は、テレビの中のあの不思議な映像、そして妙な安らぎと不安の入り交じる世界観に気が付けば恐怖と戦いながらテレビにかじりついて見ていました。
子供には理解できない内容の映画。
たぶん一般的にはそうかもしれません。
でも違う気がします。
決して優等生ではなかった当時の僕が、意味も分からずあの作品にのめり込んだ。
ゴッホの絵など興味なく、戦争だって知らなかった。オムニバスなんて言葉すらしらなかった。
なのにどうしてあんなにかじりついてみててたのか?
巨匠・黒澤明。彼はあんなに難解な内容を無知な子供の心にまで投げかける、あまりにも偉大な人だったのではないでしょうか。
今、福島が荒れています。
ニュースで目にするたび、僕の頭にはあの映像が出てくるのです。
上着を脱ぎ、必死に色のついた煙を払う男の姿を。
放射能物質に色をつけたってなんの意味も無いんだ…と叫び必死に煙を払うあの男の姿を。
今から10年以上前に、この惨状を皮肉っていた黒澤明。
もし彼が、ほんとうにこんな夢を見ながら毎晩寝ていたのなら、
彼の作った作品が、ことごとく名作になるのは当たり前と言うしかない訳です。
汚れた空気や水は、人間の心まで汚してしまう
映画「夢」(黒澤明監督)から。
「日照り雨」「桃畑」「雪あらし」「トンネル」「鴉」
「赤富士」「鬼哭」「水車のある村」・・のタイトルがついている
オムニバス形式の黒澤監督の作品である。
どの作品も、監督からの熱いメッセージが伝わってくるが、
特に最後の「水車のある村」には、目から鱗状態だった。
主役の寺尾聰さんと、水車村の老人役、笠智衆さんとの
会話だけなのだが、妙に心に響くものがあった。
特に、早寝早起きが身についてしまった、最近の私にとって、
「電気を引いているんですか?」「あんなものはいらん」
「暗いのが夜だ。夜まで昼のように明るくては困る」の会話は
頷くことばかりであった。
「人間を不幸せにするものを発明して、自分たちを滅ぼしている」
これまた、なるほど・・と頷いた。
そして、今回選んだ、気になる一言。
「汚れた空気や水は、人間の心まで汚してしまう」は、
現代の凶悪事件からいじめまでを、予感するようなフレーズ。
1990年に公開されたこの「夢」という作品から、
黒澤監督の先見性を感じずにはいられなかった。
どの作品も、メッセージ性が明確であるから、心に残る。
さすが・・黒澤監督、としか言いようがない。
PS.
どの作品も「こんな夢を見た」というタイトルから始まるが、
回を追うごとに、その文字が大きくなっている。
その意味がわからない・・う~ん、気になる。
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