「クロサワ・ワンダーランド」夢 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
クロサワ・ワンダーランド
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DVDで鑑賞。
日本の美しい風景、独特な色合いで構築された美術セットと衣装、さらに摩訶不思議な物語が渾然一体となって、まるで芸術的な絵画のような作品群だなと思いました。
感覚が常人と違えば、見る夢の質も違うのか?
これまでの監督の人生を俯瞰しながら、悩み、傷つき、戦って来たことの全てが8話の中に凝縮されている印象でした。
各話の主人公、もしくは主人公の出会う人物の年齢がどんどん上がっていくのは、監督自身の心境の変化だったり、考え方の変遷なのかな、と…。まるで人生の覚え書きのようでした。
文学的な物語もあれば、SFチックなストーリーもあったりして、非常にバラエティに富んだラインナップでした。
通底していたのは、黒澤監督が生涯に渡って追求し注いで来た、人類への真摯な眼差しではないかなと思いました。
醜くも儚い、冷たくも温かい、弱くて逞しい、人間と云う生き物への讃歌が、様々な形で心に迫って来るようでした。
[余談]
スティーブン・スピルバーグがプロデュースし、ワーナー・ブラザーズが配給していることが注目すべき点かと。
世界に認められ、数々の名作を生み出したにも関わらず、日本での映画製作がままならなくなっていた黒澤監督。
監督の作家性を重視した作品よりも、商業的に価値があるかどうかを重視する風潮が災いしてのことでした。
自国の映画会社がお金を出してくれないと云う晩年の巨匠の状況を知り、めちゃくちゃ胸が痛みました。
※修正(2023/12/14)
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