「人間と自然の近代史」夢 everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
人間と自然の近代史
下記は私の覚書で、本来のタイトルではありません。
①狐の嫁入り
②桃の節句
③雪女
④第3小隊
⑤ゴッホ
⑥原子力発電所爆発
⑦放射能汚染
⑧水車村
③までは正直何が言いたいのかよく分からなくて、早送りでも良いのではというくらい退屈でした。しかし最後まで観るとこの前半パートは、一人の男性の成長と共に、古き良き時代では敬意を払っていた、自然の摂理や脅威について描いているのかなと思いました。勝手な解釈ですが、狐に謝りに行ったり、桃の若木が残っていたり、雪女の手から生還したりするのは、「まだ引き返せる」という意味なのかしらと。
②の衣装はvividで素晴らしいです。流石です。
④の戦死した野口兵士の特殊メイクに、もしかしてこの夢はコントなのか?!と思ってしまいましたが、あの世とこの世を繋ぐような暗いトンネルから、全滅した小隊の英霊達が行進してくるシーンは訴えるものがありました。抑留からの帰還兵となった隊長の「生き残って申し訳ない」という苦しみはズシンと響きました。
⑤ではvan Goghの名画に入り込む主人公。純粋に自然の美しさをキャンバスに残し続けた画家としては、他の人のほうが適切な気もしますが、監督の見た夢ですからね。まるでa-haの"Take on me"のようで、美しく斬新な映像でした。Scorsese〜!そこは妥協せずにフランス語で通すべきでしょう。
⑥はもう預言としか思えない内容。「絶対安全と言われていたのに」ね。
⑦は放射能汚染で変わり果てた大地に住み、共喰いするしかない、鬼化した人間達。
⑧は良い空気、きれいな水で育まれた木々と花々に囲まれ、元気に人生を全うする人間達の理想郷。近代文明を拒むAmishのような生活だけれども、宗教的戒律はなく、パレードのような葬式で最期までイキイキしている。「生きているのは辛いなんて、人間の気取り」なのかぁ!
このまま行けば地球と人類の将来は⑦。
引き返して過ちを正せれば⑧。
自分が見た夢全てを繋いで、人類の壮大なひとつの夢にしてしまう所には脱帽です。