「芸術的なおぞましさ」遊星からの物体X garuさんの映画レビュー(感想・評価)
芸術的なおぞましさ
この作品でSFXを担当したロブ・ボッティンは、当時若干22歳。 この若さで多くのスタッフを指揮し、全世界の映画ファンの度肝を抜いたのだから、恐れ入谷の鬼子母神とでも言うしかない。 仕事の出来には、年齢など関係ないのだ。
これを見る限り、もはや食傷気味のVFXよりも、SFXの方が断然見栄えがいいと言いたくなる。 実際、リアルなCG映像が見飽きし易いのに対し、立体的なSFXは、何度観ても目を見張ってしまう。 写真にはない絵画の魅力と言ったらいいだろうか。 この映画の化け物には、「芸術的なおぞましさ」が息づいている。
これがジョン・カーペンターの代表作と言われるのは、もちろんSFXの凄さだけではない。 恐怖を演出したときのセンスは、やはり頭抜けている。 オープニングで、強い照明に照らされてThe Thingの文字がベリベリと剥がされるように現れるところから、得も言われぬゾクゾク感が伝わってくるのだ。 一番油が乗っていた80年代に、一番気合を入れて作った作品ではないだろうか。
この映画を観たことがない人は、才能に溢れた芸術家の想像力が生み出したこの世界を、是非とも味わって欲しい。 面白さは保証します。
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