「生きることの厳しさ」もののけ姫 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
生きることの厳しさ
総合80点 ( ストーリー:80点|キャスト:85点|演出:80点|ビジュアル:80点|音楽:75点 )
「風の谷のナウシカ」にも似た、自然と人との共生が主題の一つとなった重厚さがある。それに加えて、人がどう生きるのかという問いかけがある。アシタカ、サン、ヤマイヌと猪のモノノケたち、それぞれの立場と生き方がある。自然を開拓していくエボシがいて、一度は我が身を売られながらもタタラで自分の居場所を見つけて働く女たちもいて、エボシは自分の築いたものやそこで働く人に責任がある。みんなが目的と立場と責任があり、背負ったものの重さを感じながら命懸けで精一杯の暮らしをしているし、命懸けで守るべきもののために戦って生き抜いている。
だが文明を築き力をつけて自分たちの領域を侵す人間は、自然界から見れば侵略者。みんなが幸せになれる解決策はなく、陰謀と戦いがあって誰もが被害者となりうるし犠牲もたくさん出るが、それでも生きていかなければならない。その厳しさが描かれていたように思う。そして人の発展のために踏みにじられた自然の怒りがある。結局文明を築いた人がより力をつけて自然を征服していくのであるが、それに対する森と動物たちの命を懸けた怨念の凄まじさが見て取れる。
しかし多数の犠牲を出した戦いもたった一つの争いが終わっただけにすぎず、問題が山積みのまま残される物語は必ずしもすっきりとしない終わり方になっている。それらは視聴者が考えるきっかけにしろということなのかもしれないが、見終わった時もあれらの登場人物たちはこれからどうなるのだろうかという思いが残ってしまった。
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