劇場公開日 1997年7月12日

「共に生きる道はないのか」もののけ姫 セロファンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5共に生きる道はないのか

2021年8月14日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

子供の頃初めてこの映画を観た時は、冒頭のタタリ神のシーンが怖くて手で顔を覆い、身構えながら、“ジブリってこんなんだったっけ?”と思っていました。人間と自然の闘いの物語ですが、当初はアシタカが自然を守るため、エボシ御前をやっつける話だと思っていたのですが、どうやらそうではなさそう。闘いモノといえばヒーローVS悪者のスタイルしか知らなかった私には新鮮でしたし、物事ってそんなに単純ではないのだなと子供ながらに考えさせられた作品です。

他のジブリ作品と比べると、重いというか、観る時にエネルギーを要しそうで、テレビで何回か放送されていたのに、いつも躊躇していましたが、先日の金曜ロードショーで放送されていたのを何となく観始めたら、最後まで夢中になっていました。

大人になって久々に観たもののけ姫ですが、まずその重厚感に圧倒されました。大自然の偉大さ、動物達の躍動感、タタリ神の得体の知れぬ怖さ、シシ神の存在感。自然は人間の闘う相手ではない。神とされる彼らを殺そうとする人間のあさましさ。武器や資源を巡る人間同士の争いの愚かしいこと。

モロも乙事主もエボシも自分の種族を守る為なら死など怖くない。動物も人間も関係なく、闘うことによって皆次々と命を落としていく。そんな彼らに投げかけられた“共に生きていく道はないのか”というアシタカの問い。
誰が良くて誰が悪いとかでは無く、皆ただ生きるのに必死なだけ。仲間を守る為に必死なだけ。生き方や考え方の異なる者同士がいればそこに利害が生じるのは仕方の無い事。互いがどれだけ歩み寄れるか。その先に問いの答えが待っているのだと思いました。

セロファン