「映画の世界の一歩手前」めまい(1958) Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)
映画の世界の一歩手前
”The Master of Suspense”のヒッチコック先生の一番の傑作とも言われる作品を今日は取り上げましょう!
#めまい はヒッチコック作品の中でも最もストーリーが複雑かつ、サブストーリーのようなテーマもとても複雑で難解だと言われています。
それゆえ、この映画を見て言わなければならないことはたくさんあるのですが、今日はヒッチコックの一番の傑作ということで、ヒッチコックの代名詞、サスペンスについてさらに掘り下げて見たいと思います!
サスペンス作品にファンが多いのは、映画の中に入りやすく、時間も忘れてのめり込むことができるからです。サスペンス作品の特徴は、次に何が起こるかわからない状況で、視聴者が自然と次を予想し、そうやって予想することで、おのずと映画の中に入っていくことができることです。
それを、最大限に生かした作品が、#Vertigo です。
映画というのは、唐突に始まるものです。映画に限らず、どんな物語もそうですが、その物語の時代
、登場人物の性格、場所など、全くし視聴者は知らされない状態で映画がスタートするので、視聴者は、「映画のストーリーの一歩手前」にいる状態ですね。
そして、映画が始まり、最初の30分ぐらいまでに、その映画がどのようなストーリーを持っているのか、主要人物は誰なのか、どういう人物なのかというのがわかってくるんですね。ここで、視聴者は「映画のストーリーに追いつく」状態です。
そこから、問題が起きてクライマックスに進んでいくうちに、視聴者はキャラクターに感情移入することで、「映画の世界に入る」ことができます。
この3つの段階、特に最後の「映画の世界に入る」ということを視聴者にさせることができれば、その映画は成功と言えるでしょう!それが、難しいんですよね。
しかし、サスペンスはストーリーの特徴上、登場人物の主観でストーリーを描くことができるので、視聴者が主に主人公の目線で映画を見ることができます。それが、「映画の世界に入る」ことに繋がるんですね。それゆえ、サスペンスは映画のジャンルの中でも人気の理由です。
さてさて、前置きはそこまでにしといて、ヒッチコックはこのサスペンスをさらにもう一段階発展させたから、マスターと言われるのです。
ヒッチコックは、視聴者が「映画の世界に入った」あと、トリッキーなことをします。
それは、主人公さえも知らない情報を視聴者に提示する、ということです。今作を使って例をあげたいのですが、それはネタバレになってしまうので。。。。
とりあえず、主人公の知らない上を方を視聴者が知ることで、視聴者は「映画の世界よりも一歩先」にいることになります。そこからは、視聴者が筋書きを自分で書いていくことを可能にします。つまり、視聴者をさらに能動的に映画に向けさせるのです。
その前までのサスペンス要素にかなり自信がないとできない芸当。もし失敗すれば、クライマックス以降がだらだらとした泥沼劇にしか見えなくなります。
これをぜひ踏まえた上で、Vertigoを見て欲しい。ぜひもう一回!そしたら、見ているときに前のめりになること間違いなし!!!!