赤ひげのレビュー・感想・評価
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2025年元旦に観る映画をどうしようかと悩んでいた所「そういやまだ...
2025年元旦に観る映画をどうしようかと悩んでいた所「そういやまだ赤ひげ観てなかったな」と軽い気持ちで鑑賞してみたら、「なぜ黒澤作品中この映画だけ素通りしてきたんだ」と後悔する程に素晴らしい映画だった。
丁寧な物語の流れ、無駄なく見せたいポイントを的確に切り取るカメラアングル、音楽、そして役者陣全員の芝居。
何もかもが素晴らしい、他に表現する言葉が出てこない。本当に観て良かった。
自分の中でのマイベスト1位は「七人の侍」だったが、同率1位です。
人間とは、生きるとは、死ぬとは。
ヒューマニズム溢れる医者達の話
感想
小石川養生所の門前に一人の男が歩いてくる。男の名は保本登。幕府の御典医の紹介で長崎で三年間、オランダの最新医術を学び研鑽を積み遊学していた。遊学後は御目見医職を紹介拝命する予定であるが父親に勧められ、たまたま養生所の見学に来てみたのであった。所内を医員である津川玄三に案内してもらい所長の新出去定(赤ひげ)に挨拶をする。
津川の話によれば赤ひげは大名諸侯や富豪には名が通っていで信奉者も多く、治療は熱心で医術の腕も確かであるが、その行動は独善的で独栽者のような極端な振る舞いが多く最近は皆から鼻摘み者の烙印をおされているという。
新出は所長部屋に入り正座した保本を本質を見定めるように見つめる。保本が自己紹介するも尚、顔を洞察し続ける。思わず目を逸らす保本。沈黙の後、唐突に「赤ひげだ。本名は舌を噛みそうな名前でな。新出去定。お前は今日から見習いとしてここに詰める。それから長崎遊学中の筆記や図録を全て我の手元に差し出せ。」
保本は躊躇して一旦出直したいと希望するも荷物の送り受けも済んでいるとし、それ以上は話に掛け合う事は無かった。津川は次に医局の森半太夫を紹介する。半太夫は「ここは大変な事も多いがその気になれば勉強になる事も多い」という。
保本は一方的で無理矢理な流れで養生所の見習いとなった事を認めず、赤ひげの命に背いていたが、ある日、赤ひげと共に余命幾許もない意識のない患者の診察をする。保本の診察では後、半刻程の命であるという。赤ひげは診察は正しいとし、病歴を観て病名を答えろと言われ、胃癌と答えるも赤ひげは否定、膵臓癌が正しいとする。自覚症状が無く判った時は手遅れの場合が多い。病例がごく稀なのでよく憶えておけという。
赤ひげは言う。あらゆる病気に対しての治療法はない。医術などと言っても情け無いものだ。医者にはその症状と経過は判る。生命力の強い個体には多少の助力をすることが出来る。だがそれだけの事だ。現在、我々に出来る事は貧困と無知に対する戦いだ。それによって医術の不足を補う他は無い。貧困と無知との戦い。それは政治の問題だと言う者も多い。誰もがそう言って澄ましている。だが、政治がこれまで貧困と無知に対して何かした事があるか。人間は貧困と無知のままにしておいてはならんという法令が一度でも出た事があるか。しかし問題はもっと以前にある。貧困と無知さえなんとかなれば病気の大半は起こらずに済む。否、病気の陰にはいつも人間の恐ろしい不幸が隠れている。その隠れている不幸をも察して診続ける。その事に対して人として、医術者として何が出来るのかを考え実践していく事が我々に課せられた使命であるのだ。
保本は単なる医術知識だけでは無い、生きた本当の医療の意味を赤ひげを通して学んでいく事になる。患者と生きた医療を学ぶ事により、人間的にも成長していく様が描かれる。養生所に入所している様々な患者、また運ばれてきた患者や往診先での市井の中で病や生活に苦しむ者、それぞれのこれまでの人生やそれを取り巻く人間模様が、病気や怪我そして死というフィルターを通して濾し出されていく様子をそれぞれのエピソードとして描き出す。新出(赤ひげ)の人間性に溢れる医療分野をも越えた社会の中での生き様とも言える時々の判断や決断を見事に描写している。
医学の分野で基礎医学と臨床医学、それぞれの医療や研究があり、医療の現実的問題は諸々あると思うがこの映画を観ると特に臨床医療というものの重要性を感じる。人間性に根ざした医療とは何か。時代を超えてなお変わらない医療の本質とは何かを本作は問いかけている。
原作 山本周五郎
脚本 井手雅人 小國英雄 菊島隆三 黒澤明
主演 三船敏郎 加山雄三 山崎努
共演 団令子 香川京子 桑野みゆき 二木てるみ
土屋嘉男 東野英治郎 志村喬 笠智衆
田中絹代 杉村春子 左卜全 菅井きん 他
オールスターキャストの豪華な配役陣。
狂女役の香川京子氏の鬼気迫る演技、佐八役山崎努氏、長次(長坊)役の頭師佳孝氏、おとよ役の二木てるみ氏、各氏それぞれの演技が卓越して秀逸であり監督の演出と相俟って人間心理の複雑さ、恐怖や悲しみの涙を誘い感動する。
⭐️5
☆☆☆☆★★ 当時、本人自ら「僕の集大成」と語っていた通り。黒澤ヒ...
☆☆☆☆★★
当時、本人自ら「僕の集大成」と語っていた通り。黒澤ヒューマニズムと、当時の日本映画界の叡智を集約して描かれるダイナミズムな映像美。そしてその娯楽性溢れた全てに称賛を浴びせたくなる完成度。
…とは言え、観た人の全員が諸手を挙げて大絶賛したか、、、と言うとそうではなく。まあ、多少の(どころか、多いなる)やっかみが入り混じりその評価が真っ二つに割れた。
当然【賛】の方が多かったが。それを凌駕する程の強い【否】の声は、作品にとって不幸な出来事だったのだと、今改めて思う。
完成当時、黒澤55歳。製作に2年以上掛けているから、まさに映像作家としては脂が乗り切っている時期だったと思う。
『用心棒』『椿三十郎』『天国と地獄』を経ての今作。
有り余る自身の内から湧き上がるパワーは。当時の日本映画界ではせき止める事が叶わない程に膨れ上がり、結果的に(製作費の高騰や撮影日数の超過等)東宝との軋轢を増すだけとなる。
以前から自身のプロダクションを持ち、東宝との立場を対等にするも。それが故に周りから〝 天皇 〟扱いをされ、(芸術家としての拘りから)完全主義に拍車がかかる。
最早、日本映画界に居場所なし…とばかりに。その製作意欲、作品としてのスケールは日本を飛び出しハリウッドへ。
しかし…次から次へと押し寄せるハリウッドでの壁に行く手を阻まれ、遂には(問題が多過ぎるので省略につぐ省略します)自殺未遂。
その後も映画製作は続けたものの。稀代の映像作家である黒澤が、人生に於いて1番製作意欲を持っていた時期。その余りある芸術家としての力量を、遺憾なく発揮する事が叶わなかった事実は、悲しい現実として日本の映画界に重くのしかかる。
…等と、主にネット請け売りの知ったかぶり極まりない蘊蓄を中心に書き込みつつ。この名作に対して、ほんの少しばかりの文句を付けながら簡単な感想を、、、って、前フリが長い割にはちょっとだけかよ!と💦
今回で劇場鑑賞は3回目。
またしてもラストでは号泣してしまった訳ですが、だからと言って《完璧》な作品だとは思っていない。基本的にはエピソードを羅列して行くオムニバス形式だけに。それまで登場していた人物達の〝 その後 〟の中途半端な描かれ方に違和感があり、少しだけの不満はどうしても残る。
それらのエピソードの繋ぎ方であったり、少しずつ若い青年医師の成長に合わせた赤ひげの立ち振る舞いと、(黒澤)ヒューマニズムを追求した脚本から発せられるその説教臭さも加えて。
しかしながら。昨今の映画の長尺さには、ついついうんざりしてしまい。何度も欠伸をしながら観てしまう場合が多いのに。この『赤ひげ』ではあっという間に前半が終わってしまう。
正直に言うと、山崎務のエピソードが少々長くクドい印象は否めないのだけれど。そんな不満を凌駕する(6台の同時撮影と言われていたが)多数のカメラを同時撮影させて演出する、黒澤特有の撮影方法で醸し出される緊張感。
更には《光と影》を巧みに操る照明・美術・衣装・編集等。一流のスタッフが作り出す時代の空気と、それに呼応する役者陣の頑張りに魅力され気が付けばインターミッションへ。
前半の約1時間50分。
休憩を挟んでの後半が約1時間10分。
合わせて3時間と言う時間が一気呵成に駆け抜けて行く。
特に前半のハイライトにあたるアクション場面を経て後半への期待感を一気に高め。後半ではおとよと保本との信頼関係を築く過程に固唾を呑む。
ちょっとだけの重たさに心離れそうになりそうに至るその時に訪れる泣き笑いのクライマックスへ。
その序章は大根で頭カチ割られる大女優杉村春子の素晴らしさ。
保本とおとよ。
おとよと長次。
おとよと4人のお手伝い、おふく・おかち・おとく・おたけ。
保本とまさえ。
全てのエピソードがスンナリと収まって、、、とは言えないところは正直にはある。
前半での香川京子の狂女の話は唐突気味に終わるし、後半の主役の1人のおとよのその後をはっきりと描かれていなかったり…と言った、ほんの少しの不満はどうしても残る。
しかしそんな不満すらも映画は一気に吹き消してしまう。
保本の心にわだかまっていた呪縛を解き放つエピソードが最後に訪れる。
「おまえはバカだ!」
「…!?💡…お許しが出たのですね!」
この短い台詞で、師弟の信頼関係を表現し。観客に大いなる多幸感を与えるラスト。
その結果、全ての不満点は一気に解消させられてしまい。この見事な結末の締め方で、観客の心を鷲掴みにしてしまうのだ。
「これで良い。これで良い。」
1984年 11月17日 ニュー東宝シネマ1
2018年1月29日 TOHOシネマズ/日劇2
2021年10月13日 TOHOシネマズ錦糸町オリナス/スクリーン6
Dr.アカヒゲ小石川養生所
黒澤明監督の情熱がヒューマニズムという形で画面いっぱいに炸裂した名作だと思います‼️まず東宝のマークが現れると同時に流れ出す佐藤勝さん作曲の素晴らしいテーマ曲‼️もう金縛りにあって動けません‼️加山雄三さん扮する保本が養生所に赴任、同僚との会話で江戸の医療の実態と養生所の内情を観客に完璧に把握させる話術の妙‼️重厚な六助(藤原釜足さん)の臨終シーン‼️窓を開けると雪が溶けており、それが保本の心の雪解けを表すスゴい演出‼️山崎努さんと桑野みゆきさんが初めて出会う雪のシーンの美しさ‼️岡場所で赤ひげが、一瞬の間に十数人の用心棒を叩き伏せる立ち回り‼️杉村春子さんへの大根攻撃‼️おとよたちが井戸の底に向かって長坊の名を叫ぶシーン‼️黒澤明監督の演出も完璧だし、「用心棒」の宿場町のセットと並ぶ養生所や江戸の町並みのセットも完璧で、赤ひげ役三船さんの演技も素晴らしい‼️なんか民衆の息づかいが聞こえてくるような江戸時代の雰囲気が出ているし、黒澤監督もデビュー作「姿三四郎」から前作「天国と地獄」までで見せた作風の集大成のような素晴らしい名作だと思います‼️でもこの作品以降、黒澤作品は変わってしまいました。三船さんが出ない、カラーへ、そして海外進出。ラストの赤ひげのセリフ・・・"お前は後悔するぞ "・・・これは三船さんを起用しなくなった黒澤監督へか、または黒澤作品へ出演しなくなった(三船プロの経営で忙しかった?)三船さんへか、はたまた製作費がかかり過ぎる黒澤作品製作を渋るようになった日本の映画製作会社へか?そんな気がしてなりません。とにかく日本映画史、いや世界映画史において "赤ひげ以前、以後"という言葉は確実に存在する・・・
どんな人にも誠実になる
多くの人間群像…
長い原作を、長屋に住む病人達を看病する医者に内容を変更。
貧乏な病人を無料で看病する、日本版シュバイツァー博士の様な存在の
主人公。
相変わらず三船敏郎さんの映画俳優としての顔は映える。
50年以上経ってもテレビCMに使われるなど、他者の俳優を寄せ付けない。
現代の映画俳優で、三船さんを上回る者が出てこないのは、演技力レベル
云々より「映画俳優としての顔」の説得力を上回る者が、出てこないからでは
ないか?
医者に診てもらう金がない不幸で貧乏な人々は、様々な人生群像を背
負っている。 この無料で患者を診るという「赤ひげ」の対極にあるのが、
言わずと知れた手塚治虫氏の「ブラックジャック」で、大金をせしめて治療を
する。 無論、無料で見る「赤ひげ」が上で、大金を取る「ブラックジャック」が
下という評価ではない。
「赤ひげ」が完全な本物であるから「ブラックジャック」というアンチテーゼが
成立する
素晴らしい。臨床の場にあってこそ輝く人間の生。
高校生の頃観て面白かったので、最近二十年ぶりにAmazon_Videoで購入し鑑賞した。
やはり、素晴らしいとしかいいようがない。
高校生の頃は、世間の辛辣さとか大人の事情とか、そういったものが絵空事であったので、心に訴えかける程度も限定的であったけれど、その後二十年越しにこの映画を観ると、描かれた人々、その人生が感興を呼び寄せて生々しく迫ってくるようで仕方がない。
登場人物が身近に感じられ、感情移入できる。
おそらく、感情や情緒の描写が巧みだからだろう。
貧困や不幸に苛まれた人々を描いているけれど、そのどれもが生命力に満ちている。
決してお涙頂戴の悲哀などではない。
それでも尚懸命に生きようという人間の姿を描いており、それが製作者の人間の尊厳に対する敬意の表れであるように思えてならない。
様々な人間が登場し、その人生がオムニバスのように映画に描かれているが、どの人物も魅力的で、感情移入せずにはいられず、とにかく三時間があっという間であった。
娯楽一辺倒に化しつつある今日の映画で、こうした人間の生き方を問い影響を与えるに足る映画を観れたのが、なによりも嬉しかった。
人生の一本。
ヒューマニズムとエンタメの幸福な合体に成功した映画。
185分間、一瞬の緩みもない名作・・しかも面白い。
人間的で貧者や病人を心から思い遣る巨人・赤ひげ(三船敏朗)。
優しい男は強く。強くなければ信念は貫けない・・・兎にも角にも
「赤ひげが巨人なのだ。
江戸は小石川にある「小石川養生所」
今で言うNPOみたいな仕組みの医院。貧乏人は無料で入院・治療を施される。
その所長・新出が三船敏朗。
オランダ医学を学び幕府の御番医になるつもりが、「小石川養生所」行きを命じられて、
不平不満鬱積の保本登が加山雄三。
養生所の医師になどなるものか?と反抗に反抗を重ねる。
しかし登に降りかかる経験のないエピソード。
色情狂の美女(香川京子)
登は女の色香に惑わされ危うく簪で刺殺されそうになる。
赤ひげのお仕着せの作務衣を着るまでに、185分の映画の93分まで掛かるのだ(笑)
出張治療に赴いた娼家で12歳で必死に娼婦になるのを抗う少女おとよ(二木てるみ)に出会う。
おとよが登の最初の患者。
熱に浮かされ、心の痛手に傷つくおとよは人の親切を受け止めない。
登の優しさに心を許すとき、それは淡い思慕に変わるのだった。
二木てるみ、その時15歳。
黒澤明監督作品は女優のチカラを最大限まで引き出す。
二木てるみはその年のブルーリボン助演女優賞を16歳の最年少記録で受賞した。
粥を盗みにくる長坊(頭師義孝・・10歳の名演技も映画史に残る)
貧しく病む市井の人々に寄り添って、怒り闘う赤ひげ。
赤ひげの武勇にも驚く。
娼家の用心棒10数人相手に素手で応戦する赤ひげ。
手や脚をへし折る音が激しく鳴る。
悪人をやっつける痛快・・・赤ひげは武勇伝でもヒケを取らないヒーローなのだ。
三船敏朗45歳。加山雄三28歳。
加山の陰影ある名演技も黒澤監督は最大限に引き出した。
ペネチア映画祭・金獅子賞受賞。
三船敏朗は主演男優賞受賞。
興行的にも大ヒットしてその年の興行収入ランキング1位。
肩が凝らなきいのに、満足度100%でした。
過去鑑賞
「医は仁術」だけじゃない!ところが流石!!
時は江戸時代、幕府が運営する医療機関「小石川養生所」が舞台。
ここは幕府がお金を出して貧しい民衆の病を診療してくれる
有難い場所だけど、今も昔も公的施設はお金が足りない。
そんな養生所の支柱である「赤ひげ先生」は良い人だけでは無い。
時には暴力、時には脅し、時にはぼったくり!(笑)
医は仁術だけでなく、算術もちゃんと成り立たせてる。
そういうシーンがあるから観ていて空々しくなくて気持ち良い!
人間らしい!!
山本周五郎の原作短編を幾つか組み合わせて
1本の脚本になってますが、
そのエピソードの1つ1つを演じる役者さんたちが
まあ~~真に迫っていて、ゾワゾワします。
豪商の美しい娘ながら完全に心を病んでいる女。
親と非道な夫の板挟みになって人の道を
踏み外してしまった貧しい母親。
過酷な環境過ぎて完全に他人に心を閉ざす少女。
もう役者さんの目力と変貌が凄まじい!
今の役者さんも唸るほど上手い人は沢山いるんだけど
この時代の映画を観ると、過酷な現実を生きる人々の
強さと逞しさと悲しさが画面からあふれ出してくる。
モノクロならではの迫力も感じます。
個々の人々のどうにもならない悲惨な状況を描きながらも
どこか爽やかで、ラストに救いがあるのが
やっぱり流石、黒澤!、流石、三船!
「赤ひげ先生」の人間的な大らかさと優しさが
観る者を春の日差しの中に導いてくれる。
ついでに若き日の加山雄三も頑張ってます。
良い映画です。ぜひ映画館で!!
で、月に8回ほど映画館に通う中途半端な映画好きとしては
「午前十時の映画祭」にて鑑賞の黒澤映画9本目。
名作と名高い本作を鑑賞してみて
先日レビューを書いた「隠し砦の三悪人」とか
「椿三十郎」や「用心棒」と言った
完全に娯楽に振り切った作品とはちょっと違うけど
観ていて後味が良い!
また、昭和中期の名優たちがワンポイントで総出演していて
それを発見するのも楽しい。
笠智衆、田中絹江、志村喬、杉村春子、東野英治郎 etc
しかしこの映画1965年の作品なんだよね。
最初に出てくる利己的な若い医者が侮蔑を込めて
ここには貧乏人の匂いが立ち込めていると揶揄します。
「赤ひげ先生」は幕府への義憤を込めて言います。
「病人は貧困と無知からだ!!」
コロナ禍の今と何も変わらない現実に愕然とする。
ぜひ、ぜひ、映画館で!!
もう最高ですね!
午前十時の映画祭にて。 こんなに素晴らしい作品を大きなスクリーンで...
いつも時代も施政者は
黒澤ヒューマニズムの集大成
山本周五郎『赤ひげ診療譚』の原作を基にして黒澤明監督が映画化したヒューマニズム溢れる人情ドラマ。一度は観ておきたい名作中の名作であれこれか語るまでもない。個人的に苦手な白黒の時代劇なのであえて評価しません。
(午前十時の映画祭にて鑑賞)
2021-132
素晴らしい人情物語
午前十時の映画祭11にて。
江戸時代、長崎で医学を学んだ青年保本は、医師見習いとして小石川養生所に住み込みとなった。最初は養生所の貧乏臭さや無骨な所長の赤ひげに反発していた保本は、養生所で禁止されてる酒を飲んだり、決められた医師の服を着なかったりと、クビにされる事を望んでいた。しかし、赤ひげの診断と医療技術の確かさを知り、人を想う心の暖かさに触れ、また彼を頼る貧乏人を治療する姿に次第に心を動かされ、赤ひげを慕うようになる話。
赤ひげの素晴らしさに感銘を受けた保本の成長物語だと思った。
赤ひげ役の三船敏郎と保本役の加山雄三が素晴らしくて、3時間と長いのに全く長さを感じなかった。
また、女優陣では、お杉役の団令子、おなか役の桑野みゆき、まさえ役の内藤洋子、金持ちのお嬢役の香川京子など、美しくてこの素晴らしい作品に欠かせない好演だった。他にも憎たらしい娼家の女主人役の杉村春子も良かった。
それと、特に、おとよ役の二木てるみが魅力的だった。
56年も前のモノクロ作品だが、今観ても素晴らしい作品だと思う。大スクリーンで観れて感激でした。
赤ひげがかわいい
豪放磊落と言いたいが、患者の心情を見抜き、適切なケアをする繊細な神経を持っている赤ひげ。
細やかな処置をする割には無愛想。
いつも怒っている。
何に?
貧困と無知に。そして、その前には、自分の医学の術など、砂漠に巻く水のような無力感に。
開発途上国と言われる地域で活動しているNGO達を思い出した。
医療も大切だけれど、まず病気にならない環境を作ろう。
そのために、現地で活動する保健ワーカーを育て、識字率を高め…、清潔な水を確保し、栄養価のある食べ物を栽培し…。
そのようなサポートがない中で、孤軍奮闘をしている診療所、人を見ずに病を診る医者ではなく、病を通して人どころか社会をみる医者のいる診療所を起点とした物語。
赤ひげを軸とし、新米医者・保本を狂言回しとして、その間を取り持つ先輩医師・森を配して、貧困の中で、そこで生きる人々の人生を、オムニバスのように、少しずつ絡めながら描いていく。
原作未読。
性的虐待を受けたと訴える女性の症状に対して、「そんな経験をした人はたくさんいる。けれど、こんな症状を持つのはこの女性だけだ(思い出し引用)」と言い切る。”そんな経験をした人”がたくさんいる状況!!!この一言で、この映画に描かれている庶民がどれだけ人権をないがしろにされているのかを表現してしまう、その脚本!そんな風に簡潔に表現するところと、たっぷり時間をかけて表現されるところの、取捨選択、テンポが秀逸。
ごく自然なふるまいと、舞台を見ているような二人の立ち位置(保本と狂女、佐八とおなか、保本とおとよ)、独演劇場を見ているような独白(佐八やおくに、独白はないけれど六助)の緩急。診療所医師の食事風景は『楢山節考(木下監督)』を思い出してしまった。
そして、光と影を最大限に活かした場面。
佐八の臨終ー本当におなかが来ているのではないかと思ってしまう。
おとよが診療所に来た最初の夜。狐憑きを思わせる。
井戸。この世とあの世を繋ぐもの。井戸をのぞき込む女たちから、井戸の水面に映る女たちに映像がかわる場面。この世とあの世がひっくり返ったようだった。
これらの脚本・演出・映像をとっぷりと堪能させてくれる役者たち。
豪華絢爛、大御所たちをこれでもかとふんだんに使う。ウォーリーを探せ状態。お一人お一人を絶賛するとそれだけで字数オーバーになりそうなほど。
そんな俳優たちの中にあって、おとよを演じた二木さん、公開当時16歳、長坊を演じた頭師氏公開当時10歳が、少しもひけをとらない演技で感動させてくれる。
そして音楽。
圧倒的貧困。
義理やいろいろな思惑が絡んで思うとおりに行かず、背負ってしまう業。
つらく苦しい話がベースだが、絶望だけでは終わらない。
そして、淡い恋物語が花を添え、全体を通して新米医師の成長譚として綴られ、未来を感じさせてくれる終わり方。
それにしても、赤ひげがかわいい。
聖人君子。仏。このような立派すぎる人の話だと、へたをすると、そのりっぱさが鼻について嫌味にもなろう。
だが、赤ひげからは嫌味さは感じられない。持ち上げられれば照れ、わざと自分のダメな部分を明かす。一生懸命、自分に対する称賛・権威を振り払おうとする。その様がかわいい。応援したくなってしまう。
この人物をこのように愛らしく演じられる、三船氏の器の大きさ。
この映画の一番の魅力はここだと思う。
この時代の俳優は本当に凄い。主役級のみならず脇を固める役者達の味わ...
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