劇場公開日 1965年4月3日

「「医は仁術」だけじゃない!ところが流石!!」赤ひげ 星のナターシャnovaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「医は仁術」だけじゃない!ところが流石!!

2021年10月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

時は江戸時代、幕府が運営する医療機関「小石川養生所」が舞台。
ここは幕府がお金を出して貧しい民衆の病を診療してくれる
有難い場所だけど、今も昔も公的施設はお金が足りない。

そんな養生所の支柱である「赤ひげ先生」は良い人だけでは無い。
時には暴力、時には脅し、時にはぼったくり!(笑)
医は仁術だけでなく、算術もちゃんと成り立たせてる。
そういうシーンがあるから観ていて空々しくなくて気持ち良い!
人間らしい!!

山本周五郎の原作短編を幾つか組み合わせて
1本の脚本になってますが、
そのエピソードの1つ1つを演じる役者さんたちが
まあ~~真に迫っていて、ゾワゾワします。

豪商の美しい娘ながら完全に心を病んでいる女。
親と非道な夫の板挟みになって人の道を
踏み外してしまった貧しい母親。
過酷な環境過ぎて完全に他人に心を閉ざす少女。

もう役者さんの目力と変貌が凄まじい!

今の役者さんも唸るほど上手い人は沢山いるんだけど
この時代の映画を観ると、過酷な現実を生きる人々の
強さと逞しさと悲しさが画面からあふれ出してくる。
モノクロならではの迫力も感じます。

個々の人々のどうにもならない悲惨な状況を描きながらも
どこか爽やかで、ラストに救いがあるのが
やっぱり流石、黒澤!、流石、三船!
「赤ひげ先生」の人間的な大らかさと優しさが
観る者を春の日差しの中に導いてくれる。
ついでに若き日の加山雄三も頑張ってます。

良い映画です。ぜひ映画館で!!

で、月に8回ほど映画館に通う中途半端な映画好きとしては

「午前十時の映画祭」にて鑑賞の黒澤映画9本目。
名作と名高い本作を鑑賞してみて
先日レビューを書いた「隠し砦の三悪人」とか
「椿三十郎」や「用心棒」と言った
完全に娯楽に振り切った作品とはちょっと違うけど
観ていて後味が良い!
また、昭和中期の名優たちがワンポイントで総出演していて
それを発見するのも楽しい。

笠智衆、田中絹江、志村喬、杉村春子、東野英治郎 etc

しかしこの映画1965年の作品なんだよね。
最初に出てくる利己的な若い医者が侮蔑を込めて
ここには貧乏人の匂いが立ち込めていると揶揄します。
「赤ひげ先生」は幕府への義憤を込めて言います。
「病人は貧困と無知からだ!!」

コロナ禍の今と何も変わらない現実に愕然とする。

ぜひ、ぜひ、映画館で!!

星のナターシャnova