劇場公開日 2024年2月16日

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「夕張が出てきた。」ミレニアム・マンボ 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0夕張が出てきた。

2024年2月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ミレニアムに時代が移る頃、台北でハオと同棲しているビッキー(スー・チー)が彼のあまりの酷さに耐えきれずに逃げ出し、ヤクザのガオ(ガオ・ジェ)の元に身を寄せる。しかし、ガオが身を隠してしまったので、彼を追って日本に来る。スー・チーがともかくかっこいい!

ハオは、くすりとアルコールの過飲によると思われる嫉妬妄想を抱えていて、ビッキーにつきまとう。彼女は何度も逃げ出すが、懇願されて戻ることの繰り返し。むしろ、映画の中で、喫煙と飲酒が目立つのはビッキーの方で、飲んでいるお酒はビールとカクテル、ジョニーウォーカーとワイン、どれもバブルの頃のお酒。台北は繁栄に向かってまっしぐら。お金は出回っているけど、彼らのように世の中の動きに付いてはいけない人たちは、必ず出てくる。

ただ、ストーリーがあるというよりは、各エピソードをスー・チーが10年後の未来からみたナレーションと、テクノポップでつないでゆく感じ。ちょっとだけフランス映画の香りがした。

侯孝賢監督が、日本に寄せるノスタルジックな思いは半端ない。きっと、小津の映画が好きなのだろう。途中で、彼女は夕張にゆく。映画が恐ろしいのは、ミレニアムの頃、既に、低迷してゆく日本を見切っていたこと。台北と対照的で、日本が出てくるシーンには全く緊張感がない。日本になくて、彼らにあるのは兵役か。従来の香港映画と比べると、侯孝賢の台湾映画には、背景に力強さがありながら、全体として、すっきりした清冽さがある。潔いと言ってもよいかもしれない。それが、かなりのところまで日本および日本映画から来ていると思えるところは嬉しいが。

ただ、最初にあった全体のシノプシスとか情景が中盤で繰り返されたり、最後に出てくる場面で「今年の東京は雪が多い」というけれど、実際の背景は夕張であったりとか、やや繰返しが目立ち、混乱もあることが気がかり。

詠み人知らず