未知への飛行のレビュー・感想・評価
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覆水盆に返らず・・
米ソ冷戦時代、第三次世界大戦への危機感は現実味を帯びていた、日本でも東宝の「世界大戦争(1961)」が本作に先だって公開されていた、こちらは軍の上層部でなく市井の人々の視点から描いており、石造りの国会議事堂が核爆発の高熱で溶けてゆくシーンの怖さは今でも覚えている。
核戦争では共倒れになるから起こるとすれば事故か軍人の暴走だろうと言われていた。その後実際にキューバ危機があったから生きた心地はしなかった。
アメリカでも同様の不安はあって映画人が立ち上がったのだろう、社会派ドラマの巨匠シドニー・ルメットを担ぎ出して当事者たちの行動を大真面目に扱ったドキュメンタリータッチの密室劇を創ってしまった、銃撃戦さながらの過激なセリフの応酬が見どころだろう、思い入れは相当なもので効果音のみで音楽は使っていない。
本作は事故としているが原因はよく分からない、トリガーは機械故障でも二重通信系で同様のコードを示す辻褄のあった誤動作はおそらくプログラムのバグだろう。月面着陸でも誤警報が出て話題になった。原題のFail-Safeは空域らしいが本来は安全設計指針で双発機では一基のエンジンが止まっても飛行できるようにする例などがあるがこの爆撃システムはトンチンカン、全く機能しない。本作では怖さを強調するあまりシステムが絶対で人間系のリカバリーをことごとく排除する設定で危機を回避できません。やはり、この辺は創りすぎでしょう、ミサイル搭載潜水艦は発射には艦長と副長の合意を必須としていました、キューバ危機の暴走を寸前で救ったのはこの軍規です、アポロ13でも最後は手動操縦で帰還しました、人間は間違いを犯すが間違いを正すのも人間であって欲しいものです。ソ連の反撃を止めるためにニューヨーク市民を犠牲にする大統領の決断は何と言うことでしょう。ショック療法が度を越しており説得力には欠ける気がする点は残念です。
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