劇場公開日 1970年7月10日

「"笑い"で"狂気"を痛烈に批判した傑作」M★A★S★H マッシュ keitaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0"笑い"で"狂気"を痛烈に批判した傑作

2012年5月26日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

傑作だ。

その痛烈な戦争批判の姿勢を抜きにして、コメディ映画として観ても笑いどころ満載で素晴らしい。
ルノワールやヒッチコック、フォン・トリアー等の監督と対極に位置するロバート・アルトマンの即興主義の演出が最大限に発揮されている。
それはアドリブのセリフだけに留まらず、例えば複数の役者が同時に喋るような特異な場面は映画に現実味を与え私達をマッシュの世界に引き込む役割を果たしている。

アメリカ史上で最もアメリカの社会や文化に影響を与えたのがベトナム戦争だろう。
強国アメリカの権威が揺らいで行く泥沼を目の当たりにして様々なカウンターカルチャーが生まれた。
そんな時代に作られたこの作品は朝鮮戦争を舞台にしながらもベトナム戦争を遠回しにかつ痛烈に批判した。
M.A.S.H.の人々は異常なまでに笑いを求めることで戦争の"狂気"から逃れることに必死なのだ。
コミカルな笑いのシーンとシリアスな手術のシーンが対照的に映され、紙一重の"狂気"と"笑い"が描かれる。
「本当のクレイジーになるよりは、自らクレイジーを装うほうがよっぽどましだろ」とアルトマンの声が聞こえてきそうだ。

keita