「宮崎駿の引き出しの多さ(と性的嗜好)に驚愕!」魔女の宅急便(1989) たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
宮崎駿の引き出しの多さ(と性的嗜好)に驚愕!
13歳になった魔女のキキが、修行のために新しい街に引っ越し、独り立ちするために頑張る姿を描いたファンタジーアニメ。
監督/脚本/プロデューサーは『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』の、巨匠・宮崎駿。
パン屋の女将・おソノさんの亭主や街の警察官、TVアナウンサーの声を演じているのは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』やテレビアニメ『らんま1/2』の山寺宏一。
久しぶりに本作を鑑賞しましたが、作品のあまりの美しさに驚きました。記憶していたよりずっと良かったです。
ひとりの少女の思春期の心の揺らぎや成長が余すところなく描かれており、これを50歳近い年齢のおじさんが脚本&監督&プロデュースしていたという事実に驚きを隠し切れません!
何より宮崎駿監督の性的嗜好がフルスロットルで展開されているのが見所です!キキなんて作中ずっとパンチラしてますから!!
でもそれを全くいやらしく感じさせないのが宮崎監督の力量の凄さ。普通こんなパンチラアニメが国民的作品にはならないって💦
…度の強いメガネをかけ、空に憧れる女好きのキャラクターであるトンボは完全に宮崎駿のアバター😅
自己投影したキャラクターを作中に登場させるというのは宮崎駿の得意技ですが、今回はまた何とも好青年というか美味しい役どころのキャラをチョイスしたものですねぇ…。
音楽の演出も素晴らしい!
キキが旅に出発し、ラジオのスイッチを入れると松任谷由実の「ルージュの伝言」が流れる、という一連のシークエンスが本当に洒落ている。それがそのままOPに繋がるところが本当に上手い!おしゃまな感じの歌詞が新しい人生に胸躍らせているキキの心情にバシッとハマってるんですよねー。
多分ここは、「音楽演出」としてクレジットされている高畑勲が演出したのだろう。素晴らしいお仕事です✨
そして、本作の舞台となるコリコの街をキキが初めて目にする場面で流れる「海の見える街」が最高!
何か新たな冒険が始まる感じが否応無く伝わってくるこの演出はすげぇ!
こんなに美しく、場面にマッチした音楽を創り出せるとは、本当に久石譲は天才っ👏
キャラクター面でいえば、ジジが良いアクセントになっている。
ただのマスコットキャラクターで終わるのではなく、キキの心情の変化を映す鏡のようなキャラクターとして機能しているお陰で、作品にグッと深みが出ています。
結局ジジとの会話というのはキキの内的会話であるわけです。キキは作中で他者と社会的に関わるようになり、さらに異性に恋愛感情を抱くようになります。
そのように精神的に大人になることで、内的会話への依存から抜け出していることを描いている。ジジと会話が出来なくなるという異常事態こそが、キキの通過儀礼になっている訳ですね。
キキも一人前になったという事ですが、観客からすると少し寂しい😢
おソノさんやトンボ、ウルスラ、お婆様など、キキの出会う人はとっても良い人たち。
こういうのって、下手をするとキキが甘やかされているように観客の目に映りかねないのですが、宮崎駿監督はしっかりとキキの努力と苦労を描いているし、何よりあの生意気な孫娘を登場させることによって、キキの「私って何の為に働いているんだろう…?」感が観客にグッと伝わってきます。
キャラクターを甘やかさず、観客にマイナスの感情を植え付けないようにする描写力は流石っ!👏
歳を取ってから鑑賞すると、キキが頑張っている姿を見るだけで涙が出てきます😭
社会にスレた大人こそ見るべき映画なのだと思います!!