劇場公開日 1994年4月29日

「大統領専用車での補佐官の提案が結末だった方が…」ペリカン文書 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大統領専用車での補佐官の提案が結末だった方が…

2022年7月4日
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鑑賞方法:DVD/BD

「大統領の陰謀」のTV放映を切っ掛けに
ビデオレンタルして
評判の高かった「隣人」も併せて観たが、
アラン・J・パクラ監督は、やはり
「大統領…」等の“政治絡み”のサスペンス
の方がお似合いだ。

1994年のロードショーの後、
一度テレビでも観た記憶があるが、
自然保護運動が絡む陰謀だったこと以外は
ほとんど覚えていなかったので
非常に興味深く鑑賞することが出来た。
また、TVでは民放の短縮版だったろうから
久々のノーカット版だったかも知れない。

主人公2人が暗殺者から逃れる数々のシーンは
少し御都合主義過ぎて、
結果2人の活躍が成功裏に収束するのは、
グリシャムの原作がどうであれ、
アメリカ映画らしく、なのだろう。
しかし、私だったら大統領補佐官が
大統領専用車の中で語ったように、
権力側が主人公2人を消した上で、
それまでの支持者をも葬り去り、
スキャンダルを逆手に
大統領再選を図る結末を選択するだろう。
後味は良くはないものの、
政治の世界の闇と権力を浮き彫りにして、
より作品に深みを生んだと思うのだが、
そうはならないのが
アメリカ映画でもあるのだろうと思った。

アラン・J・パクラ監督の
「ソフィーの選択」はその質においても
テーマ性においても別格の名作だと思うが、
総じて、
彼の作品は世俗的なサスペンス物よりは
政治絡みの作品に上手さを感じさせる。

この作品ではもう一捻り欲しかったものの、
「ソフィー…」や「推定無罪」でも
優れた脚本を手掛けていることを考えると、
監督としてだけではなく
脚本家としての能力も高い映像作家だった
のだろうと想像もした。

KENZO一級建築士事務所