ブラック・レインのレビュー・感想・評価
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俳優陣のアンサンブル、というよりバトル
相容れない刑事同士、ヤクザと言った単なる役の関係性を超えた、バトルの様な演技だった。
特にマイケルダグラスと松田優作。
『ブレードランナー』のような大阪。大阪っぽさ、日本っぽさは無い。外国人から見た日本だなあ、という印象。
ゲイシャって芸者じゃなくてホステスなのか?
若山富三郎はドスが効いてた。
優作が素晴らしい
よく言われることですが、優作が主役を食ってます。
ここまでの個性を演じられるのは、やはり天才だからでしょうか?
アメリカと日本の刑事の質の違いもクローズアップされており、
その中で手を組んで悪と戦う。その悪にも感情移入してしまう。
みんなかっこいいです。ラストも最高。
1989年製作、思えば遠くへ来たもんだ
今回TOHOの朝一リバイバルで久しぶりに見た。初見は1989年10月末、英国Bristol の少々ショボいCliftonモールの映画館で、上映まで1時間近く続く予告編とTVCM放映、近所の企業の広告を長々と見せられた後だった。
キリの良いラストのお陰か観劇後印象は悪くなかったが、やはりチグハグな展開のような気がして海外では非常に珍しい「日本語(中心)映画」なのに大喜びしなかったような。ただ覚えているシーンの多くは今回の観劇でも出色の箇所だった。
・松田優作のトレードマークと成り得た無表情→サイコ顔の鮮やかな怪演
・マイケルとアンディの妙に気持ちの良い刑事コンビ
・ガッツさん「英語分かんねーんだよ!」、内田裕也、神山繁「You’re civilians here!」、力也さんらの物凄い緊張感あるかつ滑らかな演技(みな普段の邦画よりカッコよかった)
・若山富三郎の、要求された演技をちゃんと引き出す役者魂、健さんもこれに同じ
でもやっぱり、当時批評で言われていたように健さんの英語はイマイチっぽく聞こえたし(神山・刑事部長は上手かった)、若山・親分が俄かに「Black rain〜」言い出すのは随分と唐突に感じた(声はアテレコかしらん英語完璧だった)。
最後の山場の農園や屋内調度も「どここれ、これが日本?」と反応してしまったし(撮影地韓国)、あり得ない数のデコトラと自転車とか違和感だった。当時日本でもヒットはしたが、松田優作を惜しむ声以外あまり評価は高くなかったと聞いた。
しかし!三十数年を経た今この「ニューヨーク・大阪ロケ敢行のアクションクライム・異文化バディ映画」を見たら、
これひょっとして物凄い傑作じゃないですか!!
こんな意欲的なNY→大阪下町での主要キャストロケなんて今でもなかなかちゃんとは出来ませんよ。ラストのアクション銃撃シーンが日本で撮れなかった(製作陣は西日本で撮りたかったらしい)のは当時として無理もない。上述した過剰な日本風景設定も、今時を経て見ればあれくらい異文化強調した方が異国での場面状況が分かりやすいし、サイコな犯人集団が跋扈するクライム世界観に入りやすい。
すみません、既に海外に居ながら自分のアタマの中が開国していなかった若い私には、映画のなかの「本当の日本と違うところ」探しに心が向いてしまい心ならずも先ずアラ探ししながら観劇していたようです。今なら(私に限らず)「外国人監督が日本で娯楽作を作って視点が異なる、極端になるのは寧ろ当然。その上での映像、演出の面白さ、共有・共感できる点を楽しもう」という風に見られるでしょう。そうするとこの映画はかなり良く出来ています。
健さんの英語も、寧ろブレイク直後のケン・ワタナビの「インセプション」などよりも滑舌の抑えどころが分かっている(小生恥ずかしながら英語が仕事ゆえ、上から偉そうに言います)。
そして松田優作は、単独カットでは切れ味の良い悪役をちゃーんと押し出しし、マイケルとの絡みでは半歩抑えて主役を一層引き立てている(ラスト・サムライで真田広之はカッコ良さを出し過ぎたかトムに?出演カット秒を削られたらしい)。
若山富三郎親分の「黒い雨」セリフシーンも、改めて聞いたら言わんとする理屈展開(旧古の日本→近代戦争→ヤンキーの物量と技術の暴力、空襲、原爆でコテンパン→放射能と西洋価値観の『黒い雨』を浴び、戦後の新世代日本人は歪んで育った)は比較的無理がなく感じた。これらを米国人のリドリー・スコットと製作陣が構想して日本人俳優に語らせ、1989年に一国際犯罪映画として纏めたのは多分に偉業ではないだろうか。
浮かれた極論かもしれないが、今本作を(ほぼ)このまま改編して80年代日本が主舞台の新作映画として全国や国際ストリーミングに出してもそれなり現代人の鑑賞に堪えるのではないかとさえ思ってしまったほどです。
文化的誤解や理解の限界さえお互い一般化し、怯まずテーマを伝え合おうとするようになってきた今の日本(と米国の日本コンテンツ好き層)なら、今や本作程度の“変な”日本など全く気にならず、寧ろ本作品・監督の言いたい見せたい点により注目できるでしょう。
そして松田優作… 当時も映画公開を追うように英国まで伝わってきた訃報は現地の日本人仲間皆に衝撃だったけど、今もその早逝を惜しむとしか言葉がない。第二脇役として抑制もする演技ではなく、ハリウッド名監督作品の主役か準主役として思いっきりキレた演技を魅せて欲しかった。
とまれ、良い作品の良い劇場再上映でした。ありがとう。
You watch your tail, cowboy.
日本の芸人さんも出ていて、大阪など懐かしの景色が盛りだくさんで、もう何度でも見てしまいました。1980年後半の当時にしては、日本人や日本の描き方が、激しく歪曲しておらず、そんな演出も魅力と思います。最近DVDを見て気づいたのは、英語字幕と本当のセリフが一致してないことでした。もちろんセリフの方が長いんです。詳しく知りたくて、スクリーンプレイも買ってしまいました(1994年版)。最後の空港のシーンで、ニックが松本警部補に、「You watch your tail, cowboy」と別れの挨拶するんですが、実は映画の前段階で、チャーリーがニックに言ってたと知って驚きました。何て粋なんだ。
ハリウッド映画ながら、松田優作も高倉健も良い味を出していたのが嬉しい
リドリースコット監督(エイリアン等)による1989年製作のアメリカ映画。原題:Black Rain、配給:UIP。
松田優作の遺作として有名だが、初めての視聴。優作が、暴力団員で親分に逆らってのし上がろうとする凶暴な犯人役を演じている。笑みを浮かべる様な表情と殺しの残酷性のギャップが際立ち、バイクに乗る姿もさまになっており、この映画が最後となってしまったのは非常に残念。
主な舞台は大阪だが、猥雑さが強調されているせいか色調なのか、何処か外国のチャイナタウン様に思えてしまう映像で、不思議な印象を抱いた。
アンディ・ガルシアがクラブで抜群のリズム感で “What'd I Say”(レイ・チャールズ)歌うのには感心しきり。流石に高倉健の声合わせには似合わない感も感じたが、それを含めて生真面目感とそこからの脱皮する姿は、かなり好演に思えた。これが、4年後の「ミスター・ベースボール」出演に繋がったということか。
主人公マイケル・ダグラスとクラブの女性ケイト・キャップショーの絡みは良く分からなかった。彼女は何故ダグラスをあれだけ助けたのか?一目惚れ的恋愛感情でもなさそうで、数年住んでいてもあくまでガイジンと扱われるとぼやいていたので、日本社会の外に置かれる存在に、同士的なものを覚えたのだろうか?どこか知的な雰囲気を見せていたが、彼女がその後スピルバーグ監督の奥さんになるんだと少し感慨を覚えた。
松田優作の親分演ずる若山富三郎は流石の貫禄。高倉健の官僚的な上司役神山繁もなかなかの好演であった。
監督リドリー・スコット、製作スタンリー・R・ジャッフェ 、シェリー・ランシング、製作総指揮クレイグ・ボロティン ジュリー・カーカム、日本側ラインプロデューサー水野洋介、日本側キャスティング室岡信明。
脚本クレイグ・ボロティン、ウォーレン・ルイス、撮影ヤン・デ・ボン(ダイ・ハード、氷の微笑等)、美術ノリス・スペンサー、衣装エレン・マイロニック、編集トム・ロルフ、音楽ハンス・ジマー。
出演
マイケル・ダグラス(ニック・コンクリン)、アンディ・ガルシア(チャーリー・ビンセント、ゴッドファーザーPart III 等)、高倉健(松本正博)、ケイト・キャプショー(ジョイス)、松田優作(佐藤浩史)、若山富三郎(菅井)、神山繁(大橋)、ジョン・スペンサー(オリバー)、ガッツ石松(片山)、内田裕也(梨田)、小野みゆき(みゆき)、ルイス・ガスマン(フランク)、國村隼(吉本)、安岡力也、島木譲二。
つい、日本の警察の側からみてしまう
2度目の鑑賞
前回見たのは30.年くらい前だと思う
ニューヨーク市警のニックとチャーリーは殺人犯の日本人、ヤクザの佐藤を逮捕する
日本で指名手配されている佐藤を日本へ護送するが
日本へ着いた途端、警察に偽装した佐藤の部下に騙され、逃走をゆるしてしまう
ニックとチャーリーは逃走した佐藤を追う
という物語
前回見た時の記憶はあまり残っていなくて
初めての鑑賞に近い感覚だった
高倉健につられて、つい日本側から見てしまうため
「ん?」となってしまう部分があった
他の方のレビューにもあるが
松田優作と若山富三郎の対立の構図が一回で理解できなくて、もう一度見て確認した
終盤で、チャーリーの仇をとりたいニックが、
本来の目的を忘れて佐藤を殺そうと(見る側を思わせる)するシーンがあるが
結果は身柄を警察に引き渡すのは
松本警部補と行動を共にしているうちに、
組織の大切さに気付いたという設定かな?
正直、日本を舞台に、アメリカ流のアクション映画は
「ちょっと、無理があるなぁ~」と思った
魔都大阪と最後の閃光
Blu-rayで4回目の鑑賞(字幕)。
リドリー・スコット御大の作品で好きなものを3つ挙げろと言われたら、「エイリアン」、「オデッセイ」、そして本作と云うことになるくらい、大好きな作品であります。
ストーリーはアメリカと日本の刑事が文化の違いを超えて友情を育んでいくと云うものでしたが、特段珍しくないので、本作の魅力は物語を彩った舞台や出演陣に尽きるでしょう。
関西圏で大々的なロケーション撮影が敢行され、ハリウッド映画にありがちであるヘンテコな日本描写が皆無に近いことがとても印象的でした(いろいろ苦労も多かったとか)。
見慣れた大阪の景色が「ブレードランナー」的世界観に大変貌。御大の手に掛かれば街の印象がここまで変わってしまうのかと、初めて観た時に度肝を抜かれました。
御大の作家性もあるのかもしれませんが、外国人の視点で見た大阪はまるで魔窟で、怪しさや煩雑さが日本人の視点の5割増くらいになっているんじゃないかなと思いました。
マイケル・ダグラス、アンディ・ガルシア、高倉健、松田優作、若山富三郎…当時でこれ以上は考えられないであろう日米豪華キャストが集結。日米のスターたちがひとつの画面の中に収まっていると云うことのすごさに体が震え、それぞれから放たれるオーラの凄まじさに痺れまくりでした。
特に松田優作の怪演が印象的。この時すでに病を患っていたにも関わらず、治療より本作への出演を優先したそうな。病的な感じが佐藤のキャラを一層狂気的にし、彼以外には演じられなかったであろう唯一無二のものになっていたのは、決して過言では無い。本作が遺作となりましたが、最後の瞬間に眩いばかりの閃光を残しました。まさに伝説。合掌。
[余談]
関西人として、大阪などでハリウッド映画のロケが行われたと云うのがとても誇らしいですし、吉本新喜劇でお馴染みの島木譲二が出ていたのも嬉しい限りでした。
[以降の鑑賞記録]
2021/10/23:シネマスタジアム(サンテレビ)
圧倒された
NHK BSで観ました。
松田優作さん演じる佐藤に圧倒されました。特に、佐藤がチャーリーを殺すシーン、テレビの小さな画面なのに伝わってくる迫力が凄まじく、思わず魅入ってしまいました。
画面越しでもこんなにエネルギーを感じられるような怪演が出来る人、今の日本の俳優に居るのかな。凄い方だったんですね。
大阪の街並みもいい感じでした。リドリースコット監督、本当は新宿歌舞伎町で撮りたかったらしいのですが、それならばどんな風になってたのだろうか。
男たちの戦い、友情、そして、松田優作
リドリー・スコットが大阪を舞台に描く刑事アクションの傑作。
マイケル・ダグラス、高倉健ら日米トップスター豪華共演。
本作は語るべき点多いが、やはり一番はこれに尽きる。
松田優作。
物語上敵役ながら、間違いなく本作の主役は松田優作だった。
鬼気迫る怪演。
『ダークナイト』のジョーカーを彷彿させるようなカリスマ性。
マイケル・ダグラス、高倉健を凌ぐ圧倒的な存在感。
彼のこの最期の姿が、本作を特別なものにしている。
時々思う。もし、彼が今も生きていたら…?
出るだけで場が締まる渋い名優になっていただろう。“探偵”繋がりで、『探偵はBARにいる』にカメオ出演していたり…??(親子共演も…??)
周知の通り、本作撮影前にガンである事が判明。治療に専念すれば命は助かっていたかもしれない。それはつまり、本作への出演を断念する事。
遂に掴んだハリウッド・チャンス。
無論、選んだのは…。
治療に専念して欲しかったとか、命を捨ててまで本作に出演した役者魂とか、どっちが良かったかとか誰にも決められない。
松田優作が自身で選んだ運命。
いきなり松田優作の事ばかり語ってしまったが、本作は単に作品としても、刑事アクション×男のドラマとしても、抜群に面白く、カッコいい。
ハリウッド映画ではお馴染み、ヘンテコ日本描写。
しかし、リドリー御大の手にかかると、何という事でしょう、“ブレードランナーin大阪”とでも言うか、近未来的なオリエンタル・シティーに。
勿論気になる点もあるにはあるが、それを上回る魅惑さ、斬新さ。
日本の監督だったらこうは撮れないだろう。
それを収めたヤン・デ・ボンのカメラマン手腕も称賛に値する。
ハリウッドが描いた日本の中でも、今も尚際立つ。
マイケル・ダグラス演じるやさぐれ刑事ニックと高倉健演じる堅物刑事マサ。
二人が組むようになってから面白味がグッと増すが、そこに至るまでも面白い。
母国でも問題児扱いで、正義感は非常に強いが、かなり自分勝手と言うか、命令無視は当たり前。“ダーティニック”。
日本の警察への態度もデカく、度々衝突。最初はちょっと好きになれない。
そんな彼と日本の警察との緩和的存在が、チャーリー。陽気な性格の彼を演じたアンディ・ガルシアも好演。
高倉健とのデュエットは、ある意味伝説的な名シーン!
ニックとマサの間に友情を結び付けたチャーリーの死。松田優作演じる狂犬・佐藤によって、戦慄するほどの殺され方。
遠い異国で、相棒を亡くし、孤立無縁。
そんな彼に力を貸す…と言うより、新たな相棒になるマサ。
異国人同士であっても、男と男。
そこにセンチメンタルな台詞や説明は要らない。
友情。義理。人情。決意。戦い。
バイク・アクション、泥塗れの取っ組み合い。
ニックと佐藤の因縁のクライマックスの戦いは壮絶。
どれだけこの男に振り回され、相棒も殺された。
激しく憎み、本当は殺したいほど。
が、最後は…。
犯人逮捕。
刑事としての誇りを見た。
はぁ〜...あぁ!?
↑松田優作演じる佐藤の初登場シーンでの、背中ごしに溜め息ついてからの振り向いて「あぁ!?」の顔!!
彼のシーンは色々とインパクトあって覚えているが、ここが最高ですね!
たまに、本作の演技より邦画に出てた時のほうが上手とか、オーバーアクトと言ってる輩がいるが、本作は世界に向けて作られた映画ってわかってんのかね!?
繊細なキャラじゃないんだから、あれくらいやらないと外国人に伝わらないし、リドリー・スコットの要求に見事に応えた結果の演技だっつーの!
本作のテーマは文化の衝突と和解。
アメリカ的な個を尊重する考え方の暴走の果てに、犯罪者の金をくすめる事を善しとする考えのニック刑事を、松本警部補は、盗みは死んだチャーリーを汚し、君自身を汚し私まで汚すと諭す。
松本のほうも、和を重んじチームの一員として捜査が行き詰まった時、ニックから飛び出せ!と言われる。
そして、松本はニックの危機に駆けつけ、ニックは私怨を捨て佐藤を殺さず、ニセ札の原版も盗まずに松本に渡す。
2人の友情が異文化の衝突を乗り越えたのです。
2人が空港で別れた後流れる「I’LL BE HOLDING ON」も最高♪
アクションの派手さよりも、キャラクターで魅せる素晴らしいアクション・ドラマです。
松田優作と高倉健に尽きる。
松田優作の鬼気迫る演技。
高倉健の抑揚の効いた演技。
この2人を観るための作品と言っても過言ではないでしょう。
監督リドリー・スコットのフィルターを通して見る大阪の街は、
日本人としてはなかなか入り込み難いですが、
「オオサカ」という名前の架空の街として見れば問題なし(笑)。
アンディ・ガルシアの見事な殺されっぷりと、
ケイト・キャプショーの変な関西弁も、ある意味、見所です(ばく)。
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