「ものすごく粗くてヘンだがものすごく熱くてシブい」ブラック・レイン 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
ものすごく粗くてヘンだがものすごく熱くてシブい
TOHOシネマズの『午前10時の映画祭』にて鑑賞。
『エイリアン』『ブレード・ランナー』などで知られる
映像派リドリー・スコットの1989年度監督作品。
大阪を舞台に、ハリウッドと日本のスターが共演。
NYの刑事が日米間のカルチャーギャップに苦しみながら
凶暴なヤクザを追うサスペンスアクション作。
* * *
好きな作品なんですけど、まあ最初に
まとめてツッコミを入れてしまおうかしら。
マイケル・ダグラス演じる主人公が過剰にヒロイックに
描かれるのは鼻につくがしようがない。主人公だし。
けど、ニセ札見抜けないわ犯人逃がすわ、日本の警察
(と高倉健)があまりに頭悪く描かれ過ぎだと思うし、
仇役サトーも、松田優作の鬼気迫る演技が無ければ
かなーり薄っぺらな悪党である。
それに、クライマックスの展開を急きすぎたか、
終盤の主人公たちの行動が粗い。
サトーがアレを取った後の行動とか無計画すぎ。
そしてやはり怪しげな日本描写の数々も気になる。
(まあそこは余談として追記しときます)
* * *
……そういった具合にね、
ツッコミ所も多少は(?)ありますともさ。
けれど、日本を描いた映画のなかでは風紀描写も
日本文化への理解もかなりマシな方だと思うし、
パチンコ屋やネオン街とかってやっぱ“画”になる。
日本を知らない“ガイジン”にとっては
異国感バリバリで面白いに違いない。
少なくとも、先日の『ウルヴァリン:SAMURAI』よりは
ずっと日本らしいニッポンだと思う。
(なんで25年前の映画より退化してんの)
それに映画の好き嫌いってけっきょく、
そういうトコだけじゃ決まらないじゃないすか。
やっぱ好きなんすよ、この映画。
もうかれこれ10回くらいは観てるハズなんだけど、
全然飽きずに観られるし、ラストシーンでは
いつも目頭を熱くしてしまう。
* * *
R・スコット監督の他作品でもしばしば思うのだが、
彼は『物語上で自然か否か』よりも『物語に効果的か
否か』、つまりはその画が観客の感情に訴えるものか
どうかを優先するんだろう。
彼が撮ると、見慣れた日本の光景が実に妖しく見えてくる。
深い闇、射し込む白い陽光、そのコントラスト。
白煙がもうもうと昇る朝焼けの工場地帯、
白んだ空気を行き交う人や自転車の群れ、
紅く飛び散る熔鉱と換気扇の生み出す動的な影。
妖しく輝くネオンと濡れた舗道の艶っぽさ。
街に立ち込める煙、人影がそれを掻き分ける瞬間の
説明し難い美しさ。
* * *
そして強烈なキャスト陣。
主人公が追う新興ヤクザ・サトーを演じた松田優作。
蛇を思わせるヌメッとした言葉遣いや所作
(眉の上をピッと弾く動作とか)が頭に焼き付く。
この役が彼のベストアクトとは思わないが、
それでも鮮烈。もっと世界で活躍してほしかった。
アンディ・ガルシアも良いよね。日米の主人公を
つなぐ重要な役どころ。あの人懐っこい笑顔を
思い出すとちょっと泣けてくる。
若山富三郎のズシリとした存在感も最高。
ドスの利いた英語や決め台詞が猛烈にカッコいい。
「ブチ殺したろかこのガキゃあ……」って、
一度でいいから誰かに言ってみたい(やめとけ)。
そしてもちろん、高倉健。
ニックに友人の遺品を渡すシーンや
彼の過去の行いを静かに諭すシーンなど、
さりげなさの中に熱さが垣間見えるマツが本当カッコいい。
何を今更だが、高倉健てシブい。シブいわ。つくづくシブい。
* * *
ストーリーやキャラクターは粗いし
演出も過剰な部分がある映画だと思う。
けれど僕は、日本の風景を、そして日本の役者を
これだけ魅力的に撮ってくれたことが嬉しいし、
国境を越えても共通に存在する熱いものが
あることを見せてくれたことが嬉しい。
価値観の異なるもの同士がぶつかり合いながらも、
互いの尊重するものを理解し合う。
言葉や文化の壁を越えた友情。
映画のラスト、
現状に甘んじて失いかけていた高潔な心と、
自分が正しいと信じるものの為に飛び出す勇気。
2人の男がそれぞれ何か誇り高いものを手にし、
笑い合って帰路に着く姿に、どうしようもなく
胸が熱くなる。
<2014.04.12>
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余談1:
ヘンテコ描写覚え書き。
・綺麗だけど大阪はあそこまでもくもくスモーク出てないと思う。
・突入前の特殊部隊がなぜにパチンコ屋を通る。
・“しゃぎゃうむじゃう”って何だ。
・選挙カーのウグイス嬢の声が明らかに外国の方。
・スパンコールのお姉さんの変装がすっげえ目立つ。
・彼は本当に高倉健の息子かどうかDNA鑑定した方がいいと思うんだ。
・ヤクザの会合をあんな製鉄所でやる理由が謎。
・ヤクザの会合をあんな農場でやる理由が謎。
・そもそもあの農場って絶対日本じゃないよね。
・ガッツ石松と島木譲二と安岡力也。
・「オヤブンガダマチャィネェゾ」
余談2:
ダグラスと高倉健の食べてたうどんが
やたら旨そうに見えたので、鑑賞後に
うどんを食べた。食べたのはもちろん
海老天うどんだ!
(↑それ別の映画だしそもそもどうでもいい)
ゴキです。
すみません!ゼロの件、確認してなかったの私の方でした!
申し訳ない!ここはメール通知も遅いし見難いしで、
と他人のせいにしてはいけませんね。失礼しました!
このブラックレインは、ほぼリアルタイムの、
公開約一年後にレンタルVHSで見た筈です。
当時はLDにベータ、VHS、8ミリと、
6~7台は持ってましたから、ヘンタイでしたね(苦笑)
ここはURL貼ってもいいのかな?
「シャイニング」ファンには堪らない画像集を見つけました。
astnastn.exblog.jp/22074946/
こういうの見ちゃうと、また本編が見たくなりますね!