「ハックマンの役者ぶりとフランケンハイマー監督の演出の巧さが光る娯楽映画の傑作」フレンチ・コネクション2 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
ハックマンの役者ぶりとフランケンハイマー監督の演出の巧さが光る娯楽映画の傑作
ウィリアム・フリードキン監督の前作とは趣向が違うが、娯楽映画として上出来の仕上がりを見せる。その要因は、何といっても主演のジーン・ハックマンが役者ぶりを存分に発揮していることと、監督のジョン・フランケンハイマーの演出が映画の勘所をつかんで、見応えのあるシークエンスを上手に組み立てているからだ。ハックマンとフランケンハイマーこの二人の良さで、これは充分満足すべき映画になっている。
ニューヨーク市警察麻薬課の刑事ドイルとマルセイユ市警察本部の警部バルテルミーの対立する会話が面白い。フランス語が分からないドイルひとりが派遣されるのには違和感があるが、そもそもこの映画はリアリティを最重要視する作りではなく、何が何でも麻薬密売組織のボスのシャルニエを捕まえたいドイルと、その無鉄砲で独断専行の彼に手を焼くバルテルミーとのやり取りの可笑しさが基調になっている。そこに銃撃戦や突入場面のアクションの醍醐味が畳み掛けられていて、ラストの追跡まで飽きさせない映画ならではのフィクションを楽しむことが出来る映画なのだ。
最初の突入場面では、スパイを潜入させていた作戦が無理に追い掛けるドイルの所為で犠牲者を出してしまい、一気に張り詰めた雰囲気に持っていく。次に尾行の刑事から逃げ切ったところで、シャルニエの一味に拉致されヘロイン中毒患者にさせられるのだが、このミイラ取りがミイラになるような拷問と解放された後の禁断症状に苦しむ場面のハックマンの演技が素晴らしいし、この映画の大きな見所となっている。瀕死の状態から生還する治療場面の緊張感と、軟禁状態の個室で見守るバルテルミーとのチグハグな会話のコントラスト。野球に全く関心が無いフランス人のバルテルミーにドイルがマイナーリーグ時代の昔話をするナンセンスな可笑しさ。分かち合えない二人の関係を露にする場面のこのハックマンの芝居の巧さに、ただ見惚れるばかりだ。麻薬の誘惑に懊悩するドイルと優しく視線を注ぐバルテルミー。そして、監禁されていたコロナード・ホテルを突き止め、怒りに任せるドイルの無茶苦茶な焼き打ちから、停泊している貨物船のドックで洪水に見舞われる後半のスペクタクルの連続と、ラストの秘密工場から逃げるシャルニエを追い掛けるドイルのクライマックス。火と水と追い駆けっこ。活動写真の精神を今日の娯楽映画で見せる、この脚本とフランケンハイマー監督の演出の妙味が堪らない。この追跡劇のロケーションを生かしたカメラワークと編集の巧さは特筆もの。路面バスを使いヨットに乗るシャルニエが逃げ切ったと思わせ、それでも諦めないドイルの執念の追跡を、息が上がった体力の限界まで見せてのラストショット、お見事。ハックマン、フランケンハイマーに拍手!
1977年 2月18日 ギンレイホール
中学時代に観た「大列車作戦」には大変興奮した記憶がある。そして、この作品で完全にフランケンハイマー監督のファンになってしまった。活動写真の面白さをもった映画らしい映画。もっと評価されて良いと思う。