劇場公開日 1972年

「晩年のヒッチが見せたキレとクレイジーぶりに震撼」フレンジー ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5晩年のヒッチが見せたキレとクレイジーぶりに震撼

2020年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

低迷期にあったヒッチコックが再び勢いを取り戻した怪作である。その冒頭、まるでツアー広告のようなロンドン映像が流れ、ここ数十年ずっとハリウッド生活が続いた巨匠の「母国凱旋」作であることがアピールされる。とはいえ、取り扱われるのは切り裂きジャックならぬ、ネクタイ絞殺魔によるダークでクレイジーな連続殺人事件。指名手配された無実の男が捜査網から逃れつつ、なんとか自力で真犯人を捕まえようとする。

ヒッチ作の犯人が極めてサイコなのは「サイコ」「見知らぬ乗客」でもおなじみだが、本作は過去の「見せない演出」ではなく、ヌードも死に顔もあえて「見せる」ことで観る者に衝撃を与える。その意味では従来の防波堤が効かない分だけ、なかなか危険だ。またシリアスになりすぎないよう細かなユーモアを加味し、コヴェントガーデンやレスタースクエア、テムズ川沿いなど巨匠ゆえに実現できた名所ロケを随所に散りばめているのも見どころだ。

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牛津厚信